道灌山BARには、葉巻愛好家のシニア層はもちろん、親子2代で葉巻を吸いながら互いの人生を語り合ったり、最近では覚えたての葉巻の煙を燻らせながら、ゆったりとした時間を過ごす20~30歳の若者もやってくるという。
もっとも、近年は禁煙化の流れの中で、葉巻を思う存分吸える場所は多くないが、都内でも名の通ったラグジュアリーホテルには、決まって葉巻を取り扱う飲食店やシガーバーが入っている。また、冒頭で紹介した商社マンのように、カウンターが数席しかないような隠れ家的なシガーバーも残っている。
しかし、そんなシガー文化も途絶えかねない事態が起きている。厚生労働省が飲食店の形態や規模を問わず、専用の喫煙室を設けない限り、店内を“原則禁煙”にする新法案を国会に提出しようとしているからだ。しかも、違反者には罰則も科される予定だ。
「飲食店の中でも、お酒を楽しむのがメインのバーは、喫煙者も多いですし、とりわけ葉巻を愉しむシガーバーは、その空間全体が“喫煙室”。初めから嫌煙家は来ません。
海外でも、例えばフランスの高級レストランでは、フランス料理を食べる時間より、食後にお酒や葉巻を嗜みながら皆でゆっくり会話をする時間を大切にする文化もあります。
分煙や禁煙といった喫煙ルールはあくまでも店が決めることであって、お客さんの嗜好や自由な時間を奪うような一律規制はいかがなものかと思います」(広見氏)
長年受け継がれてきた“スローライフ=シガーライフ”の慣習。心の健康が失われゆく現代社会において、「大人の贅沢な嗜み」は大切に守りたい文化でもある。