ある意味サプライズは大成功してるようだが、ますます険しい顔をして佇む夫がいた。録画を中断し理由を尋ねることに。
すると「もちろん驚いたよ? でも、この何秒間で、この子を飼う覚悟しなきゃだから、今、必死で覚悟決めてた。ふたりとも働いているのに大丈夫かなとか、お義母さんは一緒にいて疲れないかなとか(わが家は母も含めた3人暮らしなのだ)考えてた。うん、でも、うん、覚悟したよ!」と、全く想像もしていなかった意見を言う夫がいた。
つくづく思った。私はホントにおめでたい人間だ。喜ばせたい一心だけで走った半年だった。幼い頃からずっと犬のいる環境で育ってきた私は、いつだって受け入れ態勢万全な、言わば家族が増えるという足し算の頭しかなかったのだ。
家族一人ひとりの考えは異なる、足し算が引き算になることも。特に相手の心は方程式にも似て、時にひもときながら進まなくてはいけない。愛くるしい子犬は間違いなく尊い命。飼える自信も気持ちもあるが、迎える覚悟は家族会議に匹敵するくらい必要なのだと今頃気づいた。
メルシーという名前をつけたのは、私。夫が好きなフランスの言葉で、この気持ちを胸に刻みたかったから。夫婦連れ添って長くなってきたけれど、まだまだ知らないことばかり。知り尽くしたようで誰よりも夫を知らないのかもしれない。夫に教えられ、小さなシュナウザーに教えられたのだ。
その名の通り、今やメルシーはたくさんの「ありがとう」を周りにもたらしてくれる子にガシガシ成長しています。
しかし男の子はヤンチャですね~。今までずっと女の子だったので発見と驚愕の日々。食べるためには寝ている私を起こし、前脚を私の口に入れてきたりと(汗!)その行為は違うぞとどう教えましょうかね~。かと思えば、ちょこんと頭を私の肩にあずけ甘えてくるギャップに毎日ドキドキさせられております。いわゆるツンデレです。メルシー、あなたに参りました。出会えたご縁に心から言いたい。
あなたに会えてみんなに笑顔が増えました、メルシー、メルシーボークー!
撮影■渡辺達生
※女性セブン2017年2月9日号