作家の井沢元彦氏
井沢:監督は選手を下の名前で呼びますよね。それも人たらしの戦略ですか?
栗山:はい、そうですね。プロ野球って監督と選手の距離感がまだまだ遠い。近づきすぎない程度で、選手が遠慮せずに自分を出せるようにしたいんです。
井沢:去年はペナントは大逆転で優勝し、CSや日本シリーズでもその采配が絶賛されました。短期の戦い方と長期の戦い方をどのように分けているんですか。
栗山:フロントと監督、そして選手との間では、考える時間軸が違うんですね。監督というのは1年から3年間ぐらい先のチームづくりまで考えているイメージがあるんですが、フロントはさらに5年、10年先を見ている。
でも選手は今日の試合を勝つために必死になる。そういうさまざまな価値観があるんですが、僕は選手たちと同じく、今日勝たなかったら明日はない、余力を残さない勝ち方しかできないんです。お客さんも入っていますからね。
井沢:プロ野球はエンターテインメントでもあると。
栗山:はい。これだけ金をもらっていて、全試合に全力を尽くさないなんてあり得ない。去年は中島卓也と田中賢介の二遊間をフル稼働させた結果、シーズン終盤は2人とも調子を落としてしまった。でも、僕は他の選手が出るよりもこの2人のほうが絶対勝ちに近づくと思ったから使い続けたんですね。そのあたりは今日の勝ちしか考えられない僕の反省点でもありますが。
※週刊ポスト2017年2月10日号