「あの記事、フェイスブックで読んだ?」「うん…怖いよね。子供に絶対に食べさせられない」──スマホ片手の主婦たちの間で1月中旬、爆発的に広がったネットニュースがある。
タイトルは《イギリスの有名シェフがマクドナルドに勝訴! 裁判によって『肉』の正体が明らかに》。内容を簡単に言うと、マクドナルドのハンバーガーのビーフパティに、〈本物の肉の代わりに、“食用肉から出たくず肉、腱、脂肪、結合組織を混ぜたものから成るペースト状の生地と、アンモニアから作られたもの”を使用していたこと〉が“裁判”によって明るみに出たというものだ。イギリス人シェフと思しき白人男性と、グロテスクなピンク色のペーストの写真も添付されている。
記事はフェイスブック上でのシェアと、ツイッター上でのリツイートが繰り返され、瞬く間に拡散した。ところが、結論から言うと、この記事はまったくのデマだった。
事の発端は、トルコ国営放送が運営するニュースサイト『TRT』日本語版が1月16日に投稿した記事だった。それを日本のニュースサイト『イイタメ』(騒動後に閉鎖)が〈間違っても、子供には食べさせてはいけません〉と後追いで報じた。すると、その内容を引用するウェブサイトが次々と現れ、“伝言ゲーム”式にデマが拡大した。
たしかに、記事に登場するイギリス人シェフのジェイミー・オリバー氏は実在する。2010年当時、アメリカでは農務省が安全とした「ピンクスライム」と呼ばれる加工肉(挽き肉を水酸化アンモニウムで防腐処理したもの)が広く使用されていた。オリバー氏はそれをテレビ番組で批判。マクドナルドなど多くの外食チェーン、食品メーカーは水酸化アンモニウムの防腐処理の中止を発表した。
とはいえ、それも7年も前のことで、アメリカ国内でのことにすぎない。日本マクドナルド広報は女性セブンの取材に対して、「米国本社に確認しましたが、記事に出ているイギリスのシェフと裁判をしている事実はありません。また日本においてはこれまで、問題の加工肉が使われたことは一度もありません」と説明する。