「あくまで刑法違反。JR東日本の駅構内に設置してあるコインロッカーの約款に、収容できないものとして『遺骨』と明記されています。禁止されているところに遺骨を置いたので、『遺棄した』となったわけです。
とはいえ、こういったケースは、実際にはほとんどが不起訴となり、起訴されたとしても執行猶予がつきます」(田村さん)
家族が遺骨を捨てるといった事件はここ数年、珍しいことではなくなった。その理由はさまざまだ。
例えば2015年5月、東京都練馬区の無職の男(当時68才)が、警視庁石神井署に死体遺棄容疑で書類送検された。男は近所のスーパーの男性用トイレの便器内に妻の頭や顎の骨を捨てた。
「生前、苦労をかけられ憎んでいた」――そう言って容疑を認めた男。近年問題になっている「妻からのDV」に人知れず悩み、苦しんだあげくの復讐だったのだろうか。
また老後破産や下流老人という言葉の実相をまざまざと見せつけられる遺骨遺棄事件もある。
2011年8月、東京都小金井市の住所不詳、無職の男(当時60才)が父親の遺骨が入った骨壺をゴミ袋に入れ川に捨てたとして逮捕された。男はこんな供述をしていた。
「お金がなく埋葬できなかった。捨てるのが悪いとわかっていたが、住む場所がなく、持ち歩けなかった」
終活が人生の大きなテーマとなっているなか、多くの人が深刻な墓問題に直面している。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんが言う。
「単身世帯で住まわれているかたが増えていて、65才以上だと25%。夫婦だけという世帯も31%。そんなデータが示すとおり、自分が死んだら誰に始末をお願いしようかと悩まれているかたは非常に増えています。
また親が亡くなった場合、ちゃんと供養はしたいけれど、あまりお金をかけられない、お墓を作っても守っていけない、などという相談も非常に増えています」
一口にお墓といっても、今は永代供養墓、樹木葬、合葬墓など、その様式は多岐にわたり、最近では送骨という手段も注目されている。