中国の都市の渋滞は深刻(写真:アフロ)
都市の成長とリンクしやすいのが渋滞。中国の都市の多くが問題解消に頭を悩ませている。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国で最も渋滞のヒドイ都市はどこか? そんな質問をされれば、ほとんどの中国人は迷わずこう答えるに違いない。
「北京!」
いまや渋滞は北京の一つの名物でさえあるから当然だ。しかし、現実にはそれは必ずしもそうではないという。
この根拠となったのは1月10日に交通運輸部(省)科学研究院など複数の研究所が合同で発表した〈2016年度 中国主要都市交通分析報告〉のなかにあった資料、各都市の渋滞度ランキングである。
この資料によれば北京の渋滞の深刻度は全国で三番目。山東省済南市、黒竜江省哈爾浜(ハルビン)市に次ぐ位置だという。ちなみに、そのベストテンを悪い順に並べてみると、済南市、ハルビン市、北京市、重慶市、貴陽市、深圳市、昆明市、杭州市、大連市、そして広州市であった。
このランキングで一位の都市は、自動的に出勤が最もつらい都市ということになる。
興味深かったのは、北京や上海などの大都市では一様に伸び幅が低く、深圳に至っては対前年比でマイナスになってもいることだ。つまり大都市の渋滞レベルに各地方の都市が急速に追いつき追い越したことがこの資料から読み取れるのだ。これはある意味で中国の地方ではまだまだモータリゼーションの波が続いているということでもある。
だが、この渋滞の深刻さを見れば、誰もが思い浮かべるのがPM2.5の問題だろう。トランプ新大統領の誕生で米中がそろって提出したパリ協定の行方は不透明になっているが、いずれにしても中国の大気汚染は早急に取り組まなくてはならない問題になっている。そんなとき、まだまだ自動車の需要が増えているといっても、それを素直には喜べないのが本音かもしれない。