──宗教家である一方、経営者としても活動している。
深見:基本的にビジネスは本名で活動している。名刺が30種類あって一時は秘書が26人いました。教祖が経営者になっても何の問題も矛盾もありませんよ。松下幸之助氏は辯天宗(べんてんしゅう)の総代で西武グループの堤康次郎氏は箱根神社の信者、他にも土光敏夫氏や出光佐三氏など、日本の経営者は宗教との関わりが強い。神道は聖と俗を区別して共存しますから。
──なぜビジネスと宗教を両立できるのか?
深見:ビジネスは活動、宗教は情熱とフィロソフィーと区別し、混同せず共存してるからです。また中小企業はマーケットをセグメント(細分化)して、トップのシェアをめざすべき。例えば、大手メーカーが冷蔵庫を作るなら、我々は製氷機を作ってその分野で1位になる。事実、みすず学苑は関東だけで展開し、小人数制で英語教育に絞った。宗教も同じことです。私の出る広告は確かに胡散臭いけど、“納豆・ドリアン・くさや”と一緒で、実際に食べて気に入る人だけ来ればいい。仮に99人に嫌われても、1人が気に入れば成功です。
──たしかにあの広告は、一度見たら忘れられない。
深見:我々は2012年に宗教法人化しました。宗教団体は新聞考査により広告を出せないので、塾や出版社名義で出稿しています。広告は細かな文言まで全部自分で考えて、1回で10回分のインパクトをめざしている。掲載は関東版のみだったり、製作も自社でまかなうので、広告にかかる費用は意外と安いですよ。
●ふかみ・とうしゅう/1951年、兵庫県生まれ。同志社大学経済学部卒。その後、西豪州で創造芸術学修士、中国の清華大と浙江大で文学博士号を取得。母が信仰していた世界救世教に幼年期から親しみ、浪人中に大本教に転向。大和ハウス勤務を経て、1977年に開祖植松愛子氏と出会い、25人の弟子と同教団の礎を築く。1978年「三十鈴」を設立(「みすず学苑」を運営)。1984年、同教団前身の「コスモコア」を設立。教団代表を務める傍らオペラや書道など多彩な活動を展開。生涯独身を貫く。
●ワールドメイト:神道系の宗教団体。本部は静岡県伊豆の国市。会員数は約7万7000人。伊勢神宮参拝など伝統の神事にちなんだ活動のほか、お盆の灯籠流しや花火大会などエンタメ色の強い行事も開く。入信にあたっては月会費2500円、準会員1200円。2012年に宗教法人格を取得した。
※SAPIO2017年3月号