三菱商事は2月2日、2017年3月期の連結最終損益が4400億円の黒字になる見通しだと発表した。三井物産も2月8日に決算を発表した。連結最終損益は3000億円で、当初予想を800億円も上回る大幅な上方修正だ。
「財閥の復活」に市場は敏感に反応した。2月8日に三井物産が今期の連結純利益予想を上方修正すると始値1664円だった同社の株価は終値1695円まで上昇した。これを受けて三井物産が出資するセブン&アイ・ホールディングスの株価も連れ高になった。
「財閥系企業の復調は、グループ企業や関連企業にも連鎖していく。だからこそ財閥系企業の株価上昇は、長期的な株価上昇トレンドに連動していく可能性があるのです」(証券関係者)
すでに「財閥パワー」は業種の枠を越えて、今後の株価上昇の呼び水となりつつある。わかりやすいのは不動産だ。『経済界』編集局長の関慎夫氏が「財閥系不動産は絶好調」と指摘する。
「今期、三井不動産と住友不動産は過去最高益を見込み、三菱地所も過去最高に迫る水準です。不動産価格が押し上げられるなか、保有物件の売却益が大きく膨らんだことが要因です」
関氏が注目するのは、三菱と三井、そして三大財閥の一角である住友も加わって進む東京駅周辺の開発だ。
もともと東京駅の北東に広がる日本橋エリアは三井財閥発祥の地であり、三井不動産本社や三越本店が並ぶ「三井村」だが、2015年、このエリアに住友不動産が高さ180メートルの「東京日本橋タワー」を竣工した。
“殴り込み”にあった三井不動産は東京日本橋タワーのすぐ隣に高さ175メートルの高層ビル建設を進め、返す刀で東京駅東側にある八重洲の再開発を表明した。
三井と住友のバトル勃発に東京駅西側の丸ノ内エリアを拠点とし、多くのグループ企業が本社を置く三菱が動き、三菱地所は東京駅北側の大手町と八重洲にまたがる「常盤橋街区」の再開発計画を発表した。一連の動きがもたらす相乗効果を関氏は好感する。
「東京駅周辺という、日本の心臓部で行なわれている“新たな街づくり”はヒト・モノ・カネの移動や情報伝達のスピードアップを一新して生産性を向上し、日本経済を活性化する起爆剤になります。こうした壮大なプロジェクトの実現は一民間企業では難しく、圧倒的な資金力とグループ企業からの様々なサポートのある財閥ならではです」
※週刊ポスト2017年2月24日号