“真面目な人が長生き”という因果関係を明らかにしたのは2011年に米国で発表された「長寿プロジェクト(The Longevity Project)」だ。
スタンフォード大学の心理学者ルイス・ターマン教授が1921年、10歳前後の児童1528人を対象に調査を開始。その後、1980年代になってカリフォルニア大学の長寿学者ハワード・フリードマン教授が引き継ぎ、「性格」と「寿命」の因果関係を80年にわたって追跡する大規模調査に結実したのだ。
健康長寿を実現するための特性とはどのようなものなのか。ターマン・フリードマン研究をはじめとした成果から、志向すべき性格とはどんなものなのかを探った。
◆「短気」か「呑気」か
1975年、アメリカの心臓外科医メイヤー・フリードマン氏(前出のハワード・フリードマン氏とは別人)が明らかにしたのは、「せっかちで競争心が強い」タイプはそうでないタイプに比べ、狭心症などの冠動脈疾患の発生率が2.24倍も高まるという事実である。
時間的な強迫観念から不健康な生活パターンになりやすく、疾患に陥るリスクが高まると解釈される。
〈タイプA〉と名付けられたこの性格の特徴をM・フリードマン氏が著した論文は具体的に示している。
「仕事だけでなく地元でも周囲からよく思われたい心理が働く。少年野球のコーチやボランティア活動のリーダーを頼まれると断わることができず、休日でさえも自分の時間がない」(『タイプA行動の診断と治療』より)
こうしたライフサイクルを続ければ、かりに病気にかからなくても長生きにもつながらないのは明らかだ。精神科医で岡田クリニック院長の岡田尊司氏が解説する。
「時間を管理する余裕がない人は、食事だって味わいもせず追われるような早食いになり生きていく潤いが失われてしまう。時間を配分して淡々と味わう心のゆとりが必要です」
◆「攻撃的」か「温和」か
〈タイプA〉は、勝つことへの執着も強く、敵意を表わしがちだ。再びM・フリードマン氏の論文から。
「すべての競争に勝つことへ願望があり、妻とのカードゲームやスポーツばかりか会話でも主導権を取ろうとし、小競り合いが絶えない。ゲームで子供を勝たせてやることにも抵抗がある」
攻撃的な性格も「心の余裕」とは無縁のもの。家族との間で、こうした大人気ないやりとりをした経験がある人は、改めて心を入れ替える必要がありそうだ。