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プレミアムフライデー「午後3時終業」で土日出勤増の懸念

 中堅消費財メーカーでは社長の意向で始業時刻を1時間早める朝方勤務を提案したが、営業部から猛反発を受けた。説明にきた人事部員に対し、管理職から、

「量販店や卸問屋に営業に出向いているときに、取引先にうちは終業時間が4時半なので、これで失礼します、と言えるわけがないだろうが。人事部は何を考えているんだ!」

 という批判を浴びせられた。人事部員が、

「もちろん、取引先に出向いているときは仕方がないとしても、内勤の日の場合は定時に帰ってもらうことがワークライフバランスの面からもよいかと……」

 と説明しても、一部の管理職から「5時前に会社を出ても飲み屋がまだ空いていないじゃないか!」という本気とも冗談ともつかない声も上がったという。中には「あんまり早く帰っても嫁に叱られるんだよ!」と、家庭の内情を暴露する中年社員もいたそうだ。

 結局、この会社では始業時間を1時間ではなく、30分早めることで朝方勤務を始めることになった。これは営業だけの問題に限らない。事務系でもやるべき仕事量が変わらなければ、仮に定時に退社したとしても会社近くのカフェや自宅での“持ち帰り残業”で補うしかない。

 たとえば働き方改革、残業削減と称して「全社消灯」「ノー残業デイ・ノー残業月間の実施」「残業許可制・定時等の強制退社」などの形式的な施策を実施する企業も多いが、業務量や業務プロセスなどの見直しもなくやってしまうと結果的に社員に負荷をかけてしまう事例が多くある。

 この問題はプレミアムフライデーの3時終業でも同じだ。経産省がいくら「豊かな週末を過ごしましょう」と言っても、仕事が片付いていればの話だ。仕事が終わらないまま3時に会社を出されても残りの仕事はそれこそ週末の土・日にやることになるだろう。

 プレミアムフライデーもう1つの大問題がある。2000社を超える多くの企業が売上げ増を狙って様々なイベントを企画しているが、それに駆り出されるのは社員である。事前の準備に追われて夜遅くまで働くだろうし、当日も後片付けなどで長時間労働を強いられることになりかねない。

 いうまでもなくサービス・小売業が日本の就業者の多くを占めている。「豊かな時間を過ごしましょう」と言われても恩恵を受けるのは全員ではない。そもそも働き方改革と消費喚起のためのプレミアムフライデーを結びつけること自体が矛盾しているように思う。

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