もしかしたら海外メディアはすべて偽ニュースになったのか。そう疑念を抱くほど、日米首脳会談をめぐる日本と海外のメディア報道はズレまくっていた。
日本では安倍政権に批判的なスタンスの朝日新聞までが、1面から4面まで全部使って〈「満額回答」といえる内容〉〈市場に安心感〉など首脳会談の成果をヨイショし、他紙も横並びで絶賛した。
対照的にドナルド・トランプ氏の入国禁止令に批判的な欧米メディアは冷ややかだった。
〈日本の首相はトランプ大統領の心をつかむ方法を教えてくれた。それは媚びへつらうことだ〉(米誌タイム)
〈トランプ大統領との個人的な結びつきを強めようとする安倍首相の強い決意は他の国の首脳とは対照的〉(ワシントン・ポスト)
と、安倍晋三首相のなりふりかまわぬ擦り寄りぶりを皮肉たっぷりに報じたのをはじめ、英国エコノミスト誌は〈安倍は多くの日本人が不信感を抱いているリーダーに擦り寄ることで政治的なリスクを犯している〉と評し、フランスの有力紙ル・モンドは東京特派員の署名記事で〈フロリダの太陽の下でゴルフと気前のいい贈り物があればトランプを落とせるのか?〉と疑問を投げかけ、スペインの有力紙エル・パイスも〈日本の首相はイスラム7か国からの入国拒否を行なった感情的な大統領にも『信頼』を示した〉と皮肉交じりに書いた。
ネットでも、ホワイトハウスの日米共同会見でトランプ氏と熱い「19秒間の握手」を交わした安倍首相の表情が拡散され、トランプ氏との浅い握手で距離があることを示したカナダのトルドー首相の“大人の握手”と対比されて物笑いのタネにされている。外交評論家の孫崎享氏(元外務省国際情報局長)が指摘する。
「英国のメイ首相は就任直後のトランプ大統領と真っ先に会談したが、安倍首相のようにべったりではなく、入国禁止令などの政策には賛成できないとはっきり反対している。米国ではいまやトランプ氏の不支持率が支持率を15%も上回っている。首相が米国民から支持されていない大統領とゴルフをしていくら個人的に蜜月関係になっても、それが国益になり得るのか」
※週刊ポスト2017年3月3日号