ライフ

AIが急速に発達 いま、人間ができることを追求するべし

鎌田實医師が人間とAIの違いについて考察

「常識」と思われていることは、実際には、せいぜい最近の数十年の当たり前でしかないことが少なくない。家族のカタチも、父、母、祖父母、子どもが一緒に暮らすのが当たり前だと思っているかもしれないが、そんなカタチは壊れ始めている。鎌田實医師が、家族を描いた映画をきっかけに、AIと人間の違いについて考察する。

 * * *
 家族のカタチが壊れ始めている。非婚・晩婚化も激しい。熟年離婚も多い。パートナーとの死別で独り暮らしの高齢者も増えている。15年で100万人増えて400万人になった。みんなどこかで寂しさを感じている。若者から高齢者までがんばって恋をして、パートナーを探すのも大切なことだ。

 現代の家族の崩壊の物語を描いた映画『たかが世界の終わり』。34歳の若者が自分の死を悟り、12年ぶりに家族のもとに戻ってくる。そのたった一日を見事な映像美で描いている。監督は、若き天才グザヴィエ・ドラン。

 家族が全力でぶつかり合い、爆発するのだが、怒りも憎しみも悲しみも切なさもすべて愛の一部だと気付かせてくれる。

 昨年、AIが小説を書いて、話題になった。将棋や囲碁、チェスでは、AIは人間に勝ち始めた。深層学習ができるようになり、話し相手にもなりだした。今後もめざましく発展していくだろう。

 合理的な思考を追求するAIは、古典的なSF小説のように、「人間がいなければ、うまくいく」と、近々人間を排除しようとする世の中が来るのだろうか。

 人間は不完全である。理屈に合わないこともする。愛はいつだって理屈に合わない。だから面倒と思わず、だから面白いと考えたい。愛するから傷つけられたり、傷つけることもある。AIは、そんな人間の不可解な愛を習得できないだろう。だからこそ、愛は尊いのだ。

「ルネサンス」とは、フランス語で「再生」「復興」を意味する。日本では文芸復興と訳されている。人間復興と訳すと今の時代にピッタリ。AIが発達すればするほど、人間にできることを追求する必要が出てくる。ポストの「死ぬまで……」も、人間でしかできないことの一つなのかもしれない。

 映画や芸術のなかでは、ドロドロした不完全な愛の物語を描くことだろう。そういう、愛も憎しみも含めた、まるごとの人間性を復興する「第二のルネサンス」が来始めているような気がする。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『死を受け止める練習』『遊行を生きる』。

※週刊ポスト2017年3月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト