ツーリズムもインバウンド市場の活況により成長産業としての可能性が再認識されている。せっかく新幹線網、高速道路網がこれだけできたのだから、日本人もそれを使ってもっと遊べばいい。自分自身が遊ぶことで、「遊び需要」を喚起する仕事のアイデアも浮かぶというものだ。

 ただ、いくら「もっと遊ぼうよ」と言ったところで、真面目な日本人には老後の不安から抜け出せない心理的バリアがあるのも確かだ。しかし、そんな日本人の特性はそれほど伝統的なものではない。江戸時代後期に成立した落語の三遊亭一門の「三遊」とは、「飲む、打つ、買う」に由来する。私たちにはそういう遊びのDNAも受け継がれている。今やるべきは、働き方改革より「遊び方改革」なのだ。

 遊民経済学の範疇には観光やギャンブル、エンタメ産業はもちろん、冒頭に述べた飲食業、「感動」という意味では冠婚葬祭業界も含まれる。このように考えていくと、「遊び」をキーワードにすれば、もっと開拓可能なフロンティアはあるはずだ。これまでのやり方を変えて、独自な道を行くと覚悟を決めれば、日本がこれからも世界の先頭を走っていくことは十分可能だろう。  

●よしざき・たつひこ/1960年富山県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、日商岩井(現・双日)に入社。ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書などを経て現職。著書に『アメリカの論理』『1985年』(いずれも新潮新書)などがある。

※SAPIO2017年3月号

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