このことは専門家には周知の事実で、再調査にあたる専門家会議座長の平田健正・放送大学和歌山学習センター所長も、地上部が覆われていることを理由に「たとえ地下の有害物質が揮発しても地上部は安全」と述べてきた。それでも小池氏は「安心・安全は譲れない」と厳しい目を向けてきた経緯がある。政治評論家の有馬晴海氏も首を傾げる。
「コンクリで覆われていれば安全という理屈ならば、豊洲も安全となって従来の姿勢と矛盾します。今回の発言にダブルスタンダードではないかという批判が出るのは当然でしょう」
橋下徹・前大阪市長もさっそく、「小池さん、築地が安全なら豊洲だって安全でしょ!」と疑問を投げかけている(プレジデント・オンライン)。
築地のリスクについては、本誌・週刊ポストは独自取材に基づいて何度も指摘してきた。築地の活魚水槽に大量に使われる「ろ過海水」からは2015年に基準の1.6倍の発がん性物質が検出されているし(本誌2016年11月18日号)、ドブネズミの尿による感染症が2年で4件も発生している事実も指摘した(同12月9日号)。飲みも触りもしない豊洲の「地下水」と比べれば、築地では食べ物により近い「地上」で汚染が検出されているのだ。
さらに東京都はこの3月、2013年に行なった築地の土壌調査で、環境基準の2.4倍のヒ素や1.6倍のフッ化物が検出されたことを明らかにした。今後、さらに築地の汚染が明らかになれば、“豊洲劇場”は“築地劇場”に変わり、小池氏にとって危険な“劇薬”に転じるかもしれない。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号