前出の安蔵氏も、「レグザ自体は高品質で優れたテレビ」と高く評価している。
「たとえ液晶パネルを自社で生産していなくても、内部の超解像エンジンを開発することによって“高画質競争”で他社製品よりも優位に立っています。また、レグザ最大の発明と呼ばれる『タイムシフトマシン』は、放送済みのテレビ番組をわざわざ録画しなくても、後から好きな時に見ることができる使い勝手のよさで人気も高い。
テレビ事業は赤字続きですが、開発費をかけられない中でも“できる限り上質なテレビをつくろう”と開発陣が奮闘してきた成果といえるでしょう」(安蔵氏)
3月上旬には、液晶に次ぐ“次世代テレビ”の本命ともいわれる有機ELテレビを国内メーカー初で発売したり、5月には懐かしのバズーカのサブブランドとして、重低音を効かせたウーファー搭載4Kテレビを投入する予定だったりと、逆境下でも果敢に攻める東芝。
このまま東芝経営のままテレビブランドが死守されればそれに越したことはないのだろうが、そう甘くはない。
「有期ELテレビが普及して収益に結び付くのは、早くても2020年以降といわれているし、いま最も高精細な4Kテレビもすでに価格競争が起きてフルハイビジョン並みの低価格でないと売れない時代に入った。東芝の経営陣が『社会インフラ事業やIoT(モノのインターネット)』を再建後のメイン事業に掲げている通り、もはや家電メーカーとして生き残る余力は残されていない」(経済誌記者)
白物に続き歴史ある黒物家電も手放そうとしている東芝。技術流出もさることながら、日本メーカーにしかできない高付加価値テレビのこの先の進化が止まってしまうのは残念な気もする。