異例ずくめの決算発表の裏には、様々な事情が渦巻いていた。2016年4~12月期の決算発表の延期を繰り返していた東芝は、監査法人の「適正」意見を付けないかたちで4月11日に決算を発表した。
「まさに前代未聞です。監査法人の承認なしで決算を提出しても、それは単なる“レポート”で、公の資料としての体をなさない。市場のルールを大きく逸脱している」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
2015年度まで、東芝の監査は新日本監査法人が行なっていたが、2016年度からはPwCあらた監査法人(以下PwC)へと変わった。「海外も合わせて500人体制で監査に臨むと幹部が公言していた」(経済紙記者)という陣立ては、巨額の損失隠しを重ねた会社に対して当然の態度ともいえるが、そこには「PwC側も崖っぷち」(証券会社関係者)という事情もあるようだ。前出・森岡氏はこういう。
「長い間、企業と監査法人の癒着が指摘されてきた。ひと昔前までは企業側が監査法人を接待するのが当たり前だったし、監査法人の側も“重要な顧客”をつなぎ止めるため、甘い監査でお墨付きを与えてきた。結果、監査法人という存在そのものが社会の信頼を失ってしまった」
そうしたなかでPwCは、とりわけ強い危機感を抱いているとみられている。