国内

室内墓 お参りの度に骨を抱く人や生前の写真を入れる人も

実相寺青山霊廟のロッカー型「夫婦壇」

 ノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする最新お墓事情。今回訪ねた「動かないお墓」は、ブランドショップが並び、おしゃれな人たちが行き交う東京・青山。その一角に佇む4階建ての実相寺は1634年創建の臨済宗のお寺だが、堂内「青山霊廟」に「特別壇」と称する、なんと600万円の仏壇型のお墓があった――。

 * * *
 取材時、お参りに来ていた楠本敏夫さん(60才、仮名=会社員)は、3年前に父が他界した後、家族壇を買った。もともとは都内の別のお寺の檀家で、お墓もあったが、「お葬式の時に都合が悪いとかで、見ず知らずのお坊さんを派遣され、お寺と派遣のお坊さんの両方に高額のお布施を払わされた」ために離檀に踏み切り、知人に紹介されたここを「とても気に入った」と言う。

「元のお墓は相当古びてましたので、メンテナンスに費用をかけることを思えば、300万円は高くなかった。ここは、今後のメンテナンスがいらないし、清潔だし、いい不動産を買えたような感覚です」

 特別壇、家族壇の他に、ロッカー型の32cm×33cm×52cmの「夫婦壇」が100万~160万円(使用期間による)、奥行きがその半分の「個人壇」が50万~90万円(同)。

 それらも、少しなら写真など故人ゆかりのグッズを入れられるものの、大きさから考えると決して安くはない。とはいえ、青山霊廟の販売を担当するせいざん株式会社社長の岩田貴智さんに「お父様を亡くし、個人壇を求められた娘さんが、お参りに来るたびにお骨を抱きしめられている」「40代の奥さんが亡くなって、夫婦壇を求められ、中に、生前の写真をそれはそれはたくさんの枚数を入れているかたもいる」と聞き、はっとする。こうした行為は、外墓や自動搬送式では無理で、室内の「動かないお墓」だからこそできる、と。

 さらに、遺骨の一部を小さな壺に入れて安置する、位牌の形をした「位牌壇」(使用期間により24万~48万円)もあり、「故人は散骨を希望したが、手を合わせる場所が欲しい」と求める向きが少なからずいるとも聞いた。形式によらず、お墓は弔いの拠りどころであると、今さらだが強く思った。

※女性セブン2017年5月4日号

関連キーワード

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン