一方で、日本の漢方薬メーカーは、中国産原料を使用する際でも、厳重に品質検査を行い、植物という天然の素材を使いながら一定の品質を保つ技術を持っている。それが中国人にも支持されている理由といえそうだ。ただ、世界の市場においては、決して日本の漢方薬が優位に立っているわけではない。前出の渡辺教授はこう言う。

「今は世界的な伝統医学ブームで、中国は原料の生薬を握っている上に国家戦略として中医学の海外進出を推進しているので、世界におけるシェアは圧倒的です。原料生薬のうち、よく使われる甘草と麻黄は中国の輸出規制品であり、将来的に日本への輸出が止まる可能性もあります。日本の農業技術でつくれない生薬はないのですが、コストの問題がある。このピンチをチャンスに変えるために、安心安全な国産生薬を使った日本の漢方薬をブランド化して、世界に打って出るべきです」

 漢方薬を輸出産品にできれば、農業の復興と地域創生にもつながる。そのためには、まずは日本人自身が「日本の漢方薬」の価値を正しく認識する必要がある。

【PROFILE】しみず・のりゆき/1966年愛知県生まれ。大阪大学工学部造船学科卒業。1991年よりフリーランス。著書に『「脱・石油社会」日本は逆襲する』(光文社)がある。

※SAPIO2017年6月号

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