追手風親方にかけたい言葉はない。なぜなら本人に迫力がありすぎるからだ。大翔鵬、岩崎など伸び盛りの弟子たちも、部屋頭の遠藤の存在すら、本人を前にすると霞んでしまう。それでももし声をかけるとしたら、顔が真っ赤ですが血圧などは大丈夫ですか、という言葉だろうか。
「木戸番シフト」を見ながらここまで回想したところでふと思った。いずれの親方に会えることも、偶然だからときめくのだ。今日は誰がモギってくれるのかしら、とワクワクして国技館に走っていた。ポストの百三十八ページを折りこんで、ホチキスで留めた。あくまで私の場合は、であるが、木戸番シフトを知らないでいるほうが、ずっとずっとたのしい。
※週刊ポスト2017年6月9日号