この問題の解決に業界全体で取り組もうという機運は生まれず、業界団体である日本自動車工業会からは「エアバッグの品質問題は個社の問題であって、自工会としては関与しない」と言われる始末。味方を次々に失い、最後には救済出資のスポンサーに見捨てられないための最後の方策として法的整理を選択せざるを得なくなった。
「まだ最終決定ではないそうですが、事ここに至ってはこれが一番いい落としどころでしょうね」(前出のホンダ関係者)
問題を隠蔽すること、問題を放置すること、味方になってもらうべき相手を敵に回すこと、無意味な時間稼ぎをすること……タカタを絶体絶命の状況に追い込んだのは、保身に走るあまりリスクマネジメントでやってはいけないとされることをフルコースでやってしまった経営陣の無明のなせるわざだったと言えようか。
■文/井元康一郎(自動車ジャーナリスト)