国内準大手の社員は、
「タカタの物言いには、タカタだけが悪いわけじゃないのに、なぜタカタだけが責められなければいけないんだという考えが多分に含まれているように感じた。
自分も彼らとはもう話をしたくないと思ったくらいでしたが、話し合いの場でそれ以上に怒ったのは、タカタと取り引きのあった欧米の自動車メーカーの担当者たちでしたね。これでは日本の自動車産業のイメージが落ちてしまうとすら感じました」
と振り返った。これまでもタカタについては会社更生法の適用に関する噂がたびたび出た。昨年、タカタから救済出資の打診を受けた中国資本傘下のアメリカの安全システム部品メーカー、キーセーフティシステムズは、法廷整理で債務を確定させ、身ぎれいにすることを望んでいたとされる。
それに対し、タカタの創業家はあくまで私的整理にこだわり続けた。それが法的整理もやむなしという姿勢に転じたのは、
「自動車メーカーのタカタ離れがこれ以上進んでは、事業の存続どころではなくなり、下手をすると外資による出資の話も白紙になる可能性だってある。これまでタカタはずっと時間稼ぎをしてきたようなところがあったが、何も手を打たなければ時間切れになるのは当然。そのときがやってきたということだと思いますよ」(前出のホンダ関係者)
一連の問題を振り返ってみると、タカタは自分の身を守ろうとして、かえって自滅の道を歩んでしまったといえる。2014年にアメリカでタカタバッシングが起こったとき、トヨタ自動車の幹部のひとりは、
「もちろん品質問題を起こしたタカタにも責任はあるが、自動車の技術が複雑化し、モジュール化(一定の機能がパッケージされ、クルマにそのまま装着すればいい状態で出荷される半製品)が進んでいる今日、タカタ問題はクルマの品質保証をどうしていくべきかということを考えるきっかけにしないといけない」
と語っていた。エアバッグが低価格車も含めて本格的に普及しはじめたのは20年ほど前のことで、その機能がどこまで維持されるか、限界耐久性はまだ試さるまでに至っていない。
そのエアバッグの機能はクルマが廃車になるまで永久に保証されるべきなのか、それとも古くなったら定期的に重要部品を交換ないし点検すべきなのかといった議論を、世界を巻き込んですべきだという意見は、トヨタをはじめいろいろなメーカーから出された。
安全装置のライバルメーカーも、タカタ問題が噴出したときは「ウチにだって未知数なところはたくさんある」と、むしろ警戒感をあらわにしたほどだ。
タカタが初動を誤らなければ、タカタの責任は免れないものの、一社に限らず自動車業界全体の問題であるという方向に話を持っていくことも可能だった。また、タカタが自社の問題を積極的に情報公開し、解決策を示せば、タカタは信用に足る企業だと考えてもらうこともできたろう。
が、タカタの対応はそれとは真逆のもので、自動車ユーザー、自動車メーカーといったステークホルダーの怒りの火に油を注いでしまった。