「選曲した人の熱意や想いを乗せることによって、ラジオから聴こえてくる音楽に特別な感動が生まれるんです。だからこそ、ラジオで紹介された曲から、名前も知らなかったアーティストにハマッたり、関心がなかったジャンルを聴き始めたりする。それは“事故”ともいえる。
そんな素敵な出合いのために、幅広いジャンルの“これは本当に素敵な曲なんだな”と感じられる曲を選んで、変化球の解説をつけるなど、さまざまな仕掛けをしています」(高橋さん)
『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が、放送批評懇談会の第54回ギャラクシー賞『ラジオ部門DJパーソナリティ賞』を受賞したが、そんな星野もANNは、思いがけないラッキーな事故に遭遇する機会が多い番組だという。
「それこそYMOから最新のヒップホップまで本当にいろいろな音楽をかけて、まさに事故を起こしにいっているような姿勢があります。時代やジャンルを飛び越えた選曲で、そこに星野さんの思い入れや、歌詞をどう読み取ったかといった感想、曲の構造の解説などを添えている。膨大なリスナーが熱狂するのは、そうした番組に飢えている証でもあると思います」(高橋さん)
歌詞をかみしめ、曲の背景を想起させる。ラジオを通じて出合う音楽が生活の一部となることは脳にもいい、と脳画像診断医で「脳の学校」代表の加藤俊徳さんも話す。
「人は“懐かしさ”を感じる音やメロディーを耳にすると『聴きたい』という気持ちが能動的になります。『~したい』という気持ちは多くの能力を引き出すのですが、とりわけその力を発揮するのが聴覚系脳番地。聴いた曲は放送後に歌ったりするとなおいいですね。
耳にした音を再現すると記憶力がアップし、同時に過去の記憶も呼び覚まします。歌でわくわくした気分になると、感情系や思考系の脳番地も連動して刺激されて、いい循環が生まれますよ」(加藤さん)
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号