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ラジオを通じて出合う音楽が生活の一部になることの幸せ

懐かしさを感じるメロディーで記憶力向上

 ラジオを語るうえで、忘れてはならないパートナーが音楽。ニッポン放送の長寿番組ANN(オールナイトニッポン)が始まった当時、番組で紹介したザ・フォーク・クルセダーズの『帰って来たヨッパライ』(1967年)は200万枚の大ヒットに。お茶の間のラジオやカーステレオから流れてくる流行歌に人々が夢中で耳を傾け、ラジオがヒット曲製造メディアだった時代もかつてはあった。

 2010年に社会現象となった植村花菜の『トイレの神様』もラジオ発のヒットといわれるが、最近、ラジオから生まれたヒット曲が思い当たらない。女性パーソナリティーの草分けである湯川れい子さんの『全米TOP40』(ラジオ日本)などを幼い頃から聴いて育ったという、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんは話す。

「アメリカの最新チャートを40曲も聴けて、“へぇ!”と前のめりになる解説を湯川さんがしてくれる。ぼくにとってラジオの音楽体験は衝撃的なものでした。レコードで聴いた曲よりも、記憶として鮮明に刻まれていますね。ぼくが小中学生だった1980年代頃は、AMもFMも、番組を録音する“エアチェック文化”があって、真剣にラジオに向き合って音楽をむさぼり聴く土壌があったんです。今はどうしても流し聴きというか、ラジオ音楽はBGM的な感覚が強いのかもしれないですね」(高橋さん)

 ラジオから情報を得る感覚ではなく、BGMとしてぼんやり“流す”リスナーが増えたことで、番組のあり方も変わった。実際、「最近は曲をかけながらその背景や成り立ちを解説する場が減っています」と、高橋さんは言う。

「ただ、“この番組はいい音楽をちゃんと解説する”と感じてくれたら、高頻度で聴いて、音源を買ってくれたりする。こちらも音楽のガイド役の気持ちで、愚直に泥臭い紹介を大事にしています」

「ラジオにはマジックがある」と言う高橋さんは、『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ)の選曲と金曜の音楽コーナーを担当しているが、その舞台裏についてこう明かす。

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