しかし、この事件には法律を超えた、というより法律を根拠づける思想の問題点が現れている。民主主義、国民の政治参加、国民国家、そしてそれらの原因であり結果である近代的国家権力という存在。普段気づきにくいその限界が見えるような気がする。

 国家の権能は立法・行政・司法の三権に分立し、それぞれが監視し合う。このうち、行政・司法を担う人は、公務員試験、司法試験によって厳格に選別される。しかし、三権中で最も重要な立法を担う議会の議員を選ぶ選挙は、こうした資格試験はない。一体その根拠は何か。昨年国会デモで叫ばれた通り「民主主義って何だ」。

●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。

※週刊ポスト2017年7月7日号

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