店名が印押しされた年代物のお盆に店の歴史が感じられる
5人の同僚と楽しんでいた60代の紳士が、話をさらに盛り上げてくれる。
「そう、みんなはんなりが自然に身についていましてね。酔って羽目をはずしたりする人間はここにはいないですよ。私ですか。お酒は好きですが変な呑み助じゃありません。ここに会社の楽しい呑み助たちを連れて来ているだけ。みんなにここを知ってもらいたくてね。だってそれだけの魅力のある店なんですから」(百貨店勤務)
「友達を連れてくると、必ずここを好きになる。どうだいこの店、おれが見つけたんだと威張れたのは最初だけで、今はみんな勝手に来てるんですよ。やっぱり、可愛いお母さん(先代夫人の泰子さん)と6代目のおもてなしが、心に浸み込むんでしょうね」(50代、内装業)
店を奥へ抜けると、映画のセットのような古い庭が広がっている。京都では辻々でよく目にする小さな祠(ほこら)、大正時代に建てられ、そのまま時を過ごしてきた蔦の絡まる土蔵、姿のいい1本の黒松…。
「仕事を終え、繁華街を抜けてこの角打ち空間に来ると、思わずフゥーと一息つきます。ほろ酔いになって奥のこの庭に出て、さらにリラックス。囲んでいる塀のまわりはマンションだらけですが、古いお寺に負けない風情がこの庭にはあって、京都を意識しますね。そしてもう少し飲みたくなるんです」(50代、販売会社)
そんな古都に佇む酒屋の中で飲む焼酎ハイボール。
「甘くなくて飲みごたえもいいでしょ。料理の邪魔もしないし、はんなりとなるには最適の酒です。自分はまだこの店では新参の1年者ですが、この酒に関しては、けっこうベテランなんですよ」(40代、流通業)
「嫁いできて50年。昔から優しいお客さんばかりで、楽しく過ごさせてもらっています」としみじみと語るお母さんと、今宵もまた角打ちを楽しめる幸せに酔いしれる。