散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の作家・戌井昭人氏の週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、毎日通っていた銭湯で、いつも顔をあわせていた人について同氏が今も気になっていることをお届けする。
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わたしはものすごい汗っかきなので、この季節は常に着替えと石鹸、タオルをリュックに入れて出かけ、街で銭湯を見かければ立ち寄ります。人と待ち合わせをしているときも、時間を逆算し、目的地の近くにある銭湯に入ってから向かいます。サウナも好きなのですが、サウナは休憩室でダラダラするのが至福なので、用事があるときは、さっと入って、さっと出れる銭湯が最適。
先日も青森の十和田に行ったとき、朝風呂に行ってから用事を済ませ、夕方、時間が空いたので、また違う銭湯に行って次の用事に向かいました。
以前わたしは、近所の銭湯に毎日通っていて、いつも顔をあわせる人が何人かいました。喋ったりはしないし、何者か知らないけれど、来てない日があったりすると、「どうしたんだ?」と心配になったりもしていました。また肝心な部分を知っているので、町中で見かけたりすると、嬉しくなりました。