それが都議選では安倍政権の驕りに怒った有権者の間で自然発生的に広がり、衝撃的な結果を生んだ。国民は「落選運動」という強大な破壊力を持つ武器の存在に改めて気づいた。

 時の政権が強力で、既存の野党は民意を汲み上げる受け皿たり得ず、選挙で健全な民主主義が機能していない状況では、落選運動は有権者が合法的に政権に鉄槌を下す唯一の効果的な手段となる。有権者による民主主義政治の新しい方法論と言ってもいいだろう。

 実は、自民党は衆院291議席、参院で単独過半数という圧倒的勢力を持つが、2014年衆院選でも、2016年参院選でも、自民党の得票は有権者全体の4分の1にも満たない。「安倍一強」は有権者の半数近くが「投票したい政党がない」と棄権し、自民党への批判票が行き場を失って分散していることに支えられている。

 そうした実態をよく知る安倍政権は都議選の落選運動が国政選挙に連鎖し、批判票がひとつにまとまることを最も怖れている。

 国政選挙4連勝の実績を武器に解散・総選挙をちらつかせて野党を恫喝するのが大好きな首相が、野党の臨時国会召集要求を拒否し、前川喜平・前文科省次官の参考人質疑からも欧州歴訪によって逃げ、内閣改造で疑惑幕引きを急いでいるのがその証拠だろう。

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