「もともと両親は家庭内離婚してるようなもんだったけど、死んだ時はつらかった。お金が本当になくなってさ。電気止まるし。お母さん頭おかしくなって、家の中で暴れるようになっちゃった。アタシ学校辞めて、アパレルのバイト転々としてたんだけど、家に帰ればお母さんが食器投げるから。怖くて家出て、横浜で家賃4万のアパート借りて、ひとり暮らし始めたんだけど、まぁそんなこんなでキャバを辞めて」
若い世代特有の“達観”も手伝い、夜の仕事、ひいては体を売ることさえ正当化する。ここに『貧困の連鎖』が重なったと大西氏は指摘する。
「低所得ゆえに子供に満足な教育を受けさせられず、その教育格差が就職の道を狭める。結果、正社員からあぶれて貧困層になり、孫世代もまた貧困の中で育ち、教育格差が生まれる。いわば負の連鎖です。そうした環境で育った人間が手っ取り早く稼げる場として、夜の仕事が機能しました」
抵抗感の薄れ、貧困、教育格差。全てが複雑に絡み合い、女性たちが夜の世界になだれ込んでいる。
「しかし、このままでは負の連鎖は止まりません。風俗やホステスの仕事は、履歴書に書きづらいんです。多くの企業が前職として認めてくれないという問題があって。一度この世界に入ると、セカンドキャリアを見つけるのが極めて難しい」(大西氏)
まして「出会い系カフェ」は職場ですらない。履歴書の空白は埋まらず、いつまでも夜の世界から抜け出せない。
「大切なのは、私たちが夜の世界への差別と偏見をなくすことです。本人の意思を問わず、体を売らざるをえない人がいる。“なんでそんなことを”と拒絶せず、僅かでも彼女に寄り添う気持ちを持ってもらえたら、社会は変わっていくはずです」(大西氏)
※女性セブン2017年7月27日号