肺炎球菌やインフルエンザウイルス、マイコプラズマなどの病原性微生物が肺で増殖し、感染症が原因で炎症が起こる病気をまとめて肺炎という。咳と息苦しさ、発熱が主な症状で、抗生物質などの感染症治療薬で治療する。ところが、通常の肺炎と同じ症状を呈するものの、抗生物質がまったく効かないのが過敏性肺炎だ。特に梅雨時から夏場にかけて多い夏型過敏性肺炎は、その約75%を占めている。年齢を問わず発症し、再発しやすい特徴がある。
埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科の岡秀昭部長に話を聞いた。
「夏型過敏性肺炎の原因は、木造家屋に生息するトリコスポロン・アサヒというカビです。カビが肺に入り、増殖するせいで炎症を起こすのではなく、カビが抗原となってアレルギーを起こし、発症します。アレルギーなので他人にうつることはありません」
肺炎と診断されると、入院で抗生物質治療を行なうことが多い。症状が肺炎と似ているため、この病気も入院治療すると回復するが、退院後帰宅すると再発する。これは抗生物質が効いたのではなく、自宅から病院に移動し、カビから離れたために回復したのであり、自宅に戻れば再びカビを吸い込み肺炎を起こす。
診断はX線やCTなどの画像検査と病歴の問診で行なう。若い人が何度も肺炎を再発したり、毎年同じ時期に発症するのは通常では考えにくいので、過敏性肺炎を疑う。また、症状の似ている肺炎、結核、喘息と区別するために画像診断や喀痰(かくたん)検査が参考になるが、夏型過敏性肺炎では加えて血液検査を行ない、カビの抗体反応が陽性であれば診断の有力な証拠となる。