国内

島田裕巳氏が指摘「靖国神社が消える日は遠くない」

「靖国」のあり方が問われている

 元靖国神社ナンバー3(禰宜)の宮澤佳廣氏が書いた『靖国神社が消える日』(小学館)が、発売早々、波紋を呼んでいる。「靖国神社は宗教法人であってはならない、国家護持として国が責任を持って英霊を祀るべきだ」「宗教法人として宮司ら一部の判断で行われたA級戦犯合祀の手続きは不適切だった」などの主張が、沈静化していた靖国問題に再び火をつけようとしているのだ。宗教学者で『靖国神社』(幻冬舎新書)などの著作を持つ島田裕巳氏は、この本を読んで新たな危惧を抱いたと語る。

 * * *
 この本で宮澤氏が主張する、「靖国神社は国家護持の形に戻した方がいいのではないか」という問題提起それ自体は、私は筋の通った、まっとうなものだと感じます。

 そもそも靖国神社は戦前、陸海軍の管理の下で、戦没者慰霊という国家事業を行っていた施設です。そのほかの普通の神社は内務省の管轄で、海の神様、山の神様、また古事記に出てくる神様などを祀っていて、靖国とは実は戦前においても、非常に独特な立ち位置にあった神社なのです。

 それが戦後、ほかの神社と一律に宗教法人になったわけですが、そもそも宗教法人法の枠内ではできない事業をやってきた場所ではないか、やはり国家管理の形にしないといろいろ無理が生じるのではないか、とはずっと言われてきていたこと。その指摘自体は、たしかに筋は通った話なのです。

 けれども一方で、日本国憲法は政教分離を定めている。今の日本政府が神社という宗教法人を抱えて運営することは無理です。ですから靖国神社を国家で護持するためには、戦前のように、まず神道全体を日本国政府として「宗教ではない」と再規定する必要がある。そんなことはもう現実的に無理です。つまり現実的な方法論が見当たらない。

 そういうあいまいな状況を戦後70年も放置してきてしまった結果としての、ある種の歪みが靖国神社には存在していて、この本の出版自体が、まさにその歪みの象徴なのかもしれません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン