──自民党は改憲草案を公約に総選挙を2回、参院選も2回戦った。それが安倍首相が新聞で語っただけで変わる。党内で首相と議論を戦わせようともしない。そんな忖度体質が国民の不信感を強めているのではないか。
石破:私は草案の9条部分の起草委員で、あのときは党内で侃々諤々の議論をしながらまとめた。しかし、現在の自民党議員の半数近く、衆院の1~2回生や参院の若手などはまだ当選していなかったから、当時の議論には全く参画していない。草案を理解していない議員もいるかもしれない。
党の憲法改正推進本部は全体会議を2回開いたが、出席者は9条がテーマの時が約100人、緊急事態条項の時は約70人。衆参で約400人の自民党議員のうち4分の1も出席していない。
誤解が多い点だが、改憲案が国会で決議されれば、その是非は国民投票で決まる。改正を発議した自民党の議員が地元で質問されて“私はよくわかりませんが、党が決めたことだから賛成してください”などと言っていては国民には納得していただけない。
だから第一に、草案をそのまま採用するかは別にして、起草者が何を目指したかを若手議員たちに説明する機会を作って、草案をきちんと理解してもらうことを議論のスタートにしなければならない。
安倍総裁にはどんな改正をお考えなのかを全議員の前で語っていただきたいとお願いしたら、然るべきときに機会を設けたいという返事があった。
■聞き手・構成/武冨薫(ジャーナリスト)
※SAPIO2017年9月号