ひどい地域になると、男性客の半数は入れ墨やタトゥー入れており見せびらかし合い、女性客はワンナイトラブを求め、酒瓶を片手にふらつく……。隣接する公営駐車場ではナンパモノAVのスカウトや、撮影まで行われていたのだというから、まるで作り話のような欲望の街になっていた。
健康的な夏のレジャーを家族で楽しく過ごす場所だった海水浴場を取り戻そうと、各地で様々な取り組みが始まった。砂浜では刺青やタトゥーを隠すように積極的に呼びかけ、禁止項目を増やして取り締まりの強化をすることで、一部の若者たちによる迷惑行為はかなり減ったのだという。それでも、前出の土産店店主・村田さんは不安を隠せない。
「2~3年前から、警察さんや役所の方でも本腰を入れて、取り締まりやパトロール、指導を強化してくれた。そんでもって連中が消えたかというとそうじゃない。まだそれほど規制や取り締まりを強化していない別の海水浴場へ行って、海の家で酒飲んで大はしゃぎするようになった。そうやって順に海水浴場を荒らしていったら、もう県内で行くところがなくなったんだね。今度は県をまたいで騒ぎに行った。そうしたら最近、行き場がなくなった奴らがこの海岸に戻ってきてるんだよ。おめえらシャケか! と呆れるね」
ビーチの無法地帯化は、首都圏だけの話ではない。全国の海水浴場で似たような騒動が起きている。数年前には、北海道・小樽の海岸で飲酒をしていた男が車で暴走し、複数の海水浴客を轢き殺すという痛ましい事件も起きた。夏を楽しみたいという若者の気持ちも理解できなくはないが、彼らの目に余る行為が周囲に迷惑をかけているのも事実だ。行政や当局が取り締まり、若者の遊び場がなくなるとすれば、彼らは結局自分で自分の首を絞め続けていることになる。