半グレ一覧

【半グレ】に関するニュースを集めたページです。

歌舞伎町
1日に2度、半グレ集団「怒羅権」メンバーに拉致された男性が語る“周到な犯行手口”
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、1980年代後半に結成され、今も裏社会で強い影響力を持つ半グレ集団「怒羅権(ドラゴン)」のメンバーに拉致されたことがあるという男性がその手口について語る。 * * * 1日に2度、半グレ集団に拉致された男性がいる。今から20年ほど前、都内近郊のある街でのことだ。 その日の昼間、男性Aは仕事から一旦自宅に戻り、駐車場に車を止めた。車を降りて、マンションの入口に向かおうと振り返ったその瞬間、いきなり3人組の男に襲われた。「あっという間の出来事で、抵抗する暇もなかった」と話すAは、若い頃、やんちゃをしていて腕に自信はあった。だが、3人がかりで押さえ込まれては手も足も出なかった。抱えられるように車の中に引きずりこまれたのだ。 Aをさらったのは、中国残留孤児の2世、3世を中心に結成された半グレ集団「怒羅権」のメンバーたちだった。Aが当時の状況を振り返る。「車に押し込まれて、ラップで手足をぐるぐる巻きに縛られ、目隠しされた後、頭から袋を被せられた。自分たちの顔が分からないようにしたんだろうが、襲われた時に一瞬、顔は見た。知らないやつだった。移動している間中、ずっと車内でバチバチ殴られた」(A・以下同) 男らはAを殴りながら、「金はどこにある」「どこに持っている」と、金銭目的の強盗に見せかけるように暴行した。ちらっと見えた顔の印象と発音から中国人だと確信したという。彼は殴られながらも「金はない」と言い続けた。自分をさらった目的が金ではないことが分かっていたからだ。もし本当に強盗なら、キャッシュカードの番号をどんなことをしてでも聞き出し金を引き出そうとするが、男たちはそこまではやらなかった。そして数時間後、Aを箱根の山中に放り出し、男らは去って行った。東京から箱根までの道中、彼は殴られ続けた。 金銭目的ではないのなら、なぜAはさらわれたのか。事の発端は、夜の六本木で、若い頃に一緒にやんちゃしていた仲間数人と中国人の不良らとの間で起きたいざこざだった。この不良らが怒羅権のメンバーだったのだ。喧嘩の当人ではない関係者を狙う 半グレといえば、2019年に吉本興業の芸人らが振込め詐欺グループの忘年会に出席した「闇営業」問題や、特殊詐欺のイメージが強い。だが当時、六本木界隈では関東連合や怒羅権といった半グレ集団があちこちで事件を起こしていた。 2010年に歌舞伎役者の市川海老蔵さんが西麻布で関東連合OBに殴られて重傷を負い、2011年には六本木のキャバクラで怒羅権OBらに暴力団幹部らが襲撃され、2012年には関東連合のメンバーが六本木のクラブを襲撃し客を金属バットで殺されるという事件が起きている。「ちょっとしたいさかいだったはずが、相手が悪かった」とAは言う。酒が入っていれば尚更のこと、一度いざこざが起きると簡単に収まるわけもなく、そのまま喧嘩に発展。警察沙汰になる前に、どちらも引かないまま双方その場を離れたという。 だが、喧嘩はそれで終わらなかった。その後、Aを含めた数人の仲間が仲裁に入ろうとしたが、交渉はすべて決裂。「中国人の要求は一方的だった」とAは話す。「交渉が決裂すると、中国人らは喧嘩の当人同士で争うのではなく、こちら側の関係者を狙うというゲリラ戦を展開し始めた。友人数人が、続けざまに狙われたんだ。あの頃の半グレは何をやらかすか分からなかった。自分たちがやられないよう、執念深いほど徹底的にこっちを潰しにきた」 最終的にターゲットにされたのは、仲間内でリーダー的存在だったAだ。周囲には気を付けていたが、1人でいるところを強盗にみせかけてさらわれ、暴行を受けて箱根の山中で解放された。だが、事件はまだ終わりではなかった。やっとの思いで箱根から東京に戻ったAを待っていたのは、数十人の中国人だ。自宅近くの路上でAは再び拉致された。1度目と2度目ではメンツが違っていたという。「最初に俺を誘拐し暴行した中国人はそこにいなかった。だが、2つの拉致はつながっていた。俺は明らかに弱った状態で、1人でいるところを待ち伏せされたんだ」 路上で数人から殴る蹴るの暴行を受けた後、Aは再び車の中に連れ込まれた。手足を縛られ、袋を頭から被せられ、車内でも暴行を受けた。怒羅権のアジトのひとつに連れて行かれ、車から引きずり出されると、またボコボコに袋叩きにされた。「仲間の情報をよこせ」「あいつは今、どこにいる」。鉄パイプで殴るという拷問を加えながら、中国人らはAに仲間の情報を売るよう迫った。アジトに集まった怒羅権のメンバーは、この時50人近くにのぼっていたという。「あれだけの人数に囲まれたら逃げ出すのは無理。やつらに代わる代わる殴られ続けた」(A・以下同)周到に準備して喧嘩を仕掛ける 中国人らは4時間ほどAをいたぶると、置き去りにして出て行った。Aを救出したのは仲間の友人らだ。1度目に拉致され解放された後、彼は仲間に連絡し状況を伝えていた。友人らは、再び連絡が取れなくなった彼の身に何が起きたのかをすぐに理解し、駆けつけたのだ。危険を察知した友人らのおかげで、Aはアジトから逃げることが出来た。「病院に急行すると、その場で集中治療室に運ばれました。腕の骨と肋骨が数本折れており、全身打撲で全治2か月の重傷だった」 彼らの犯行の手口について、Aが続ける。「やつらのやり口は、まず数人でターゲットを拉致し、さらって車に押し込んでから手足を縛り、移動中も殴り続ける。車内のため道具は使わなかった。アジトなどで拷問する場合、使うのは主に鉄パイプ。だが相手を殺しはしない。死なない程度に痛めつけるんだ。喧嘩ではナイフだけでなく、青竜刀という半月型をした刀を持ってくることもあって、切りつけられた仲間もいた。拉致でも喧嘩でも用意周到に準備していて、抗争の時は若いメンバーが2~30人規模で動いていた」 Aは退院後、警察に被害届を提出した。しかし今度は、警察に逮捕されることを恐れた怒羅権のメンバーらが、被害届を取り下げさせようと彼の友人や家族を狙い始めた。関係ない人間にも危害が及び始めたことを危惧したAは、ある人物に仲裁に入ってもらったという。「警察に被害届を出したところで、すぐには動いてくれなかった。俺たちが昔、やんちゃしていたこともあるんだろう。かえって自分の家族や友人が危なくなり、仲裁を頼まざるを得なくなった。やつらも警察に目をつけられるのは嫌だったから、いくつか条件を呑ませた上で、被害届を取り下げた」 Aはとりあえず和解という形をとり、彼らと手打ちにしたのだ。「当時のやつらはヤクザ化していたが、その手口はヤクザよりひどかった。半グレなどと呼ばれたが、半分どころか完全にグレていた。二度と関わり合いたくない」 冷ややかにそう語ったA。その後、怒羅権のメンバーとの間にいさかいやトラブルは一切ないという。
2022.03.05 07:00
NEWSポストセブン
暴力団作品を主戦場とする2人が対談
弁護士と暴力団の共通点 漫画家・真鍋昌平&ライター・鈴木智彦対談
 全国で暴力団排除条例(暴排条例)が施行されて、この10月で丸10年。条例により暴力団の弱体化が伝えられてきた中、その間も反社会的人物を取材し続けてきた2人が初めてとなる対談を行った。 代表作『闇金ウシジマくん』に続き、ヤクザや半グレを顧客とする弁護士を描く『九条の大罪』が大ヒット中の漫画家・真鍋昌平氏と、密漁の実態を描いた衝撃ルポ『サカナとヤクザ』が文庫化された暴力団取材のプロ・鈴木智彦氏。2人が、「弁護士と暴力団は法律を守る側と破る側で対照的に見えるが、実は共通点がある」と語り合った。鈴木:『ウシジマくん』は闇金を題材にヤクザや半グレが主役となる世界を描いていましたけど、今度の『九条の大罪』は彼らを顧客とする弁護士が主役ですよね。真鍋:『ウシジマくん』を描いているときに、犯罪者側から描くのには限界があるということに気付いて。法から外れた人たちの視点と、法の内側でそのギリギリをどう攻めるかっていう弁護士の視点とは違うじゃないですか。それに、法の内側にいる人から見たほうが、読者にとっても読みやすいんじゃないかなと。鈴木:弁護士と暴力団は近いんですよね。暴力団は利益のために法律を破り、弁護士は適法の範囲内から出ないけど、いつも法律を意識し、適法と違法の境界線をみている。仕事だって似ています。カネの取り立てなどの交渉ごとでヤクザの力を頼った人たちは、同じ仕事を弁護士に頼むようになった。真鍋:ヤクザが言うと恐喝になっちゃうから、弁護士が代わりにやるっていうのは聞きますね。鈴木:暴力団は「すべては組織のため。親分のため」という理屈で犯罪を正当化するけど、弁護士は法律の範囲で「依頼人のため」になんでもする。『九条の大罪』で、弁護士が犯罪者たちの利益を守る様子をみれば、多くの人は不快に思うはずです。でも、それは社会的に正しい。悪人の人権だって守らねばならない。弁護士という仕事を描けば、どうしたってなにが善でなにが悪なのか考えます。真鍋:たしかに、そうですね。それと、私が闇金や弁護士を介してヤクザや半グレを描くのは、そういう立場にいる人たちって、ものすごい葛藤があるわけじゃないですか。法律のこともそうだし、上からもガンガン言われたり、生きるのに切羽詰まっていたりするから、ガツガツ生きているところに魅力を感じます。鈴木:ヤクザには社会からはみ出し、ヤクザとしても中途半端の、どうしようもないヤツもたくさんいる。真鍋さんの作品には、今まで描かれてこなかったダメな人たちが出てきますよね。真鍋:今まではそんな人を描いても面白いと思われなかったんでしょうね。一日中パチスロしている人とか。鈴木:ダメなヤツの、スカのような人生のほうが、人間らしさが剥き出しになりますよね。密漁取材をはじめた頃に、ある密漁チームにいた女性と出会って「黒いあまちゃん」と名付けたんです。2年後に再開したら売春婦になっていた。浪費癖で借金まみれになって、暴力団から高利で金を借りている。人間はひょんなことで墜ちます。自分だって金に詰まって、暴力団しか助けてくれなければ頼るでしょう。ただ法律を守っているだけの自分が、必死で生きている人を非難できるのか。真鍋:鈴木さんは『ヤクザと原発』の取材で原発に潜入したりもしていますよね。鈴木:まともに張り合ったら負けちゃうので。なにせ不景気の今でもサツ廻りの記者はハイヤーですし。真鍋:鈴木さんは自分でバイク運転して行っているのに(笑)。勝手な印象ですけど、鈴木さんは小学校の頃にクワガタを獲りに行くとか宝箱を探すとか、そういう感覚でそこに面白いと思うものがあったらワーッと行って、それを書いている感じがします。鈴木:『ウシジマくん』の実写版を観に行っている感じかもです。暴力団にカマシ(脅し)を入れられてる時、相手が有名な武闘派だったりすると、「俺は今、オリンピック級の脅しを実体験している!」と感動します。心は削れますが。真鍋:VR(仮想現実)なんて比較にならない興奮なんでしょうね(笑)。
2021.08.10 16:00
NEWSポストセブン
月村了衛氏が新作を語る
新作『非弁護人』発表の月村了衛氏「作品に昇華させるしかない」
【著者インタビュー】月村了衛氏/『非弁護人』/徳間書店/1870円 大衆文芸の王道に連なる設定や筋運びと、目を背けたくなるほど醜悪で邪悪な「今、ここ」のあり様──。そんな対極的ともいえる要件の両立を真骨頂とする月村了衛氏の新作『非弁護人』の魅力もまた、元東京地検検事でありながら法曹界のアウトサイダーとして生きる主人公〈宗光彬〉の設定に尽きると言えよう。〈今の自分は、法と無法の境に立って、法に従う非弁護人なのだ〉とあるように、反社会勢力を顧客に持ち、高額な相談料を得る宗光は、元同僚のヤメ検〈篠田〉にすれば屑も同然。が、法の外側にいてこそできることもあり、東十条のパキスタン料理店で出会った8歳の少年〈マリク〉から、家族共々姿を消した同級生〈安瑞潤〉の捜索を依頼された彼は、やがて食いつめた元ヤクザや在日外国人を食い物にする〈ヤクザ喰い〉の正体に迫り、暴力ではなく法廷で闘うのである。「今作を書くにあたってまず頭に浮かんだコンセプトが、このヤクザを食い物にする『ヤクザ喰い』という文言と、法曹界のブラックジャックという2つでした。 一般に弁護士というのは、各弁護士会への加入が必要で、宗光のように犯罪歴があるとどんなに優秀でも拒否されてしまう。弁護士以外による非弁活動が禁じられる中、法の埒外に置かれながらも法に則り、リーガルに闘うダークヒーローという設定はかつてなく、相当に面白いんじゃないかと。 また暴排条例の施行(2010年)以降、ヤクザの人権問題は最近注目されてもいて、ヤクザの家族、特に子供たちは悲惨な状況にあります。要領の悪い組員はリストラの対象になり、銀行口座が作れないため転職や転居も難しいとなると、それでなくても差別や偏見に喘ぐヤクザの子供の生活はどうなってしまうのか……。 その2つの着想から生まれたのが本書で、今思えば不寛容な日本社会に対する私自身の怒りが形となって現れたような気もします」〈世界が清潔であったことなど歴史上一度もない〉 それが6年前、〈習志野開発〉による用地不正取得の捜査に着手した途端、内部告発者を自殺に追いやられ、ありもしない受託収賄の罪を負わされた宗光の実感だ。 冒頭、台東区の倉庫で覚醒剤2キロが押収され、〈縣組〉の組員が関与を疑われた裁判の場面が、出所後は弁護士にもなれず、裏社会の法律相談でしのいでいる宗光のリーガルな思考回路を映し、しょっぱなから興味深い。彼は提出された証拠について盗聴など検察側の違法性をつき、なんと判決を覆してしまうのだ。「非弁護人の彼が担うのは論理構成までですけどね。習志野の一件で正義を全うしたはずの彼は、最高検のお偉方や同期の篠田にすら裏切られ、法廷での居場所そのものを失ったんです」 失意の彼は家すら持たず、最小限の荷物をリモア社のアルミ製トランクに詰め、ホテルを転々とする毎日だ。 そして、東十条の安ホテルに滞在中、父親の店で宿題をするマリクと出会う。その少年は昼食代を少しずつ貯めたという全財産の3300円を迷わず差し出すほど、ソユンの行方を本気で案じていた。きっと共に在日外国人の子供同士、支え合ってもきたのだろう。現に〈世の中には悪いことしかない〉とこぼす宗光にマリクが〈僕だって知ってるよ、それくらい〉と返し、小さな依頼人となるシーンなど、本作は胸がしめつけられる場面に事欠かない。「こうした子供の出し方は、娯楽小説の王道である一方、リスキーでもありました。かつては子供を助けるヒーロー像は大衆文学の本流であったのですが、現在そうしたリテラシーは失われつつあります。しかし私はこれまでの読書歴を通じて自分なりに体得した大衆文芸の本質を表現していきたいと思っています。そうした私の方向性と、社会の歪みは常に弱者へと向かうという真実とが、今回はうまく合致した気もしています」 ソユンの父〈安勝現〉は失職した元組員で、周囲を有機農業の投資話に勧誘し、親族諸共姿を消したという。その安が〈徳原〉なる男と行動し、パンフレットには〈瀋陽興産〉とあった事実を掴んだ宗光は、社名こそ違うものの構図は瓜二つの集団失踪に、その後何度も出くわすことになるのだ。目を疑うほどの日本人の無関心さ 徳原の他、〈加藤〉、〈寺田〉、〈田島〉、〈長谷部〉等々、架空の投資話や移住計画を持ちかけ、金を集めるだけ集めて消えた人々の隣には、常に協力者らしき男の影が。が、彼らは年柄も身なりもバラバラな上に印象が薄く、ひとまず失踪者側の事情を西は征雄会の〈楯岡〉、東は遠山連合〈久住〉らの協力を得て探る宗光は、あまりにも簡単に人が消え、かつ誰も騒がない、日本社会の〈無関心さ〉に目を疑った。〈関係者全員が姿を消し、後には何も残らない。失踪しても騒ぎにならないような者達を対象としているからだ〉〈責任を問われることさえなければそれでいい。行政とはそういう発想の上に回っているものらしい〉「ヤクザ=必要悪かはともかく、暴力団が社会的脱落者の受け皿として機能した時代は確かにあったと思う。暴力団に代わって台頭したのが半グレですが、私が最も邪悪だと思うのは半グレに加担する一般人です。 女性の人生を台無しにして『社会的に成長できてラッキーだった』と言い放つ元大学生の大手企業社員。それを許容する社会は許せない。児相の怠慢による子供の虐待死とか、今や日本人の無責任、無関心が報道されない日はないでしょう。外国人実習生の実態だって本当に酷いと思うし、ただでさえ社会に居場所のない人々に目を付け、食い物にする加藤なり長谷部なりという個人を超えた概念を、私はこの孤高の非弁護人と対決させたかったんです」 そんな宗光の闘いを見守る楯岡や久住や篠田も含め、各々の思いが交錯する法廷シーンは、まさに見物だ。「いやいや。私も法廷物は映画も含めて大好きですが、自分ではもうこりごりと思うくらい大変でしたね。ただ、これだけ暴力系な方々がいる中で、法による闘いに拘る宗光の心理は、私もわかる気がするんです。何らかの敵に法律家は法で斬り込むしかなく、それは小説家も同じこと。自分も含めた人間や社会に対する怒りや悲しみ、あるかなしかの希望も含めて、作品に昇華させるしかないので」 そもそも法とは法だけを意味せず、宗光やマリクや楯岡達が様々な矛盾を生きながらもこれだけはと芯に持つ何か、守りたい何かを、この物語に読んだ気もした。【プロフィール】月村了衛(つきむら・りょうえ)/1963年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説デビュー。2012年『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞、2013年『機龍警察 暗黒市場』で吉川英治文学新人賞、2015年『コルトM1851残月』で大藪春彦賞、『土漠の花』で日本推理作家協会賞、2019年『欺す衆生』で山田風太郎賞。著書に『影の中の影』『水戸黄門 天下の副編集長』『ガンルージュ』『東京輪舞』『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』等。176cm、62kg、A型。構成/橋本紀子 撮影/国府田利光※週刊ポスト2021年6月4日号
2021.05.26 11:00
週刊ポスト
溝口敦氏(左)と鈴木智彦氏
なぜヤクザは「負のサービス産業」と呼ばれるのか
 暴力団が絡んだ抗争事件や経済事件などはしょっちゅう報じられているが、そもそも彼らがどのように稼いで生活しているのかという根本を解説した記事はほとんどない。 長年暴力団取材を行ってきたノンフィクション作家の溝口敦氏は、フリーライター・鈴木智彦氏との共著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)で、知られざるヤクザ業の本質に迫った。 * * * ヤクザ業の本質は「つまみ食い」です。簡単に儲かりそうなネタに出合うと、その仕事が合法か、非合法かに関係なく参加したがります。 もし彼が金持ちのヤクザであるなら、持ち金を遊ばせておくより、カネにカネを稼がせてやろうと、そのネタに資金を突っ込みます(出資や投資)。 たとえば金インゴットの密輸です。日本では金の買い取りに消費税10%が加算されます。海外では金の売買に消費税や付加価値税がかからない国がいくつかあります。そういう国で金インゴットを買い付け、帰国し、日本の税関を無申告で通って、国内の貴金属商にインゴットを売却すれば、買い値に10%の消費税を上乗せしてくれます。 これで消費税分10%の丸儲けになります。「これはいいや。香港(金の売買が非課税)ぐらいなら航空代もタカが知れている。4キロも買い付けて日本に持ち込めば確実に儲かる」 と、始められたのが金インゴット密輸でした(現在は新型コロナウイルスによる格安航空機の運航停止と、日本の通関業務の厳格化でほぼ不可能)。 つまりこうした金塊密輸に買い付け資金を出資する金持ちヤクザもいるし、計画して密輸団を動かすヤクザもいます。カネがまるでなく、単に密輸団に加わって金塊の運び屋になるヤクザもいるわけです。 ヤクザは一つの商売にしがみつきません。もう儲からないと見たら、パッとやめます。 唯一、長期継続的に手掛けているのが覚醒剤の密輸と国内販売です。国内には多数の依存症患者がいます。依存症の人は違法であっても、覚醒剤を摂取したくて仕方がない。そこに根強い需要が生まれます。違法であっても、誰かが依存症者に覚醒剤を届けるというサービスを買って出ます。それがヤクザなのです。 だからヤクザは負のサービス業に従事していると言われるわけです。違法の業だから逮捕・服役の危険がある。しかし、その分、競争率は低い。カタギの人は覚醒剤みたいな危ない物には触れません。使用も所持も売買も譲渡もすべてご免です。手掛けるのはヤクザぐらいですから、当然、その分、利幅は大きくなり、たっぷり儲けることになります。こういう事情で覚醒剤がヤクザの伝統的なシノギになりました。かつては社会的な需要があった 伝統的なシノギとしては他に恐喝、賭博があります。 恐喝は、俺は何々組の何某だ、カネを出さないとひどい目に遭わせるぞと、カネを脅し取る犯罪です。しかし、これは被害者の前に最初から姿を現し、かつ所属を明らかにしていますから、逮捕される度合いが高い。だから今は年々減少している犯罪です。逆に被害者とは電話の折衝とカネの受け渡しだけで、顔も所属も明らかにしないオレオレ詐欺など特殊詐欺のほうが儲けが大きくなるわけです。 賭博は違法で、警察に徹底的に家宅捜索を繰り返されたり、賭博参加の客に迷惑を掛けたりするので、今、常設の賭場などはなくなりました。わずかにバカラ賭博などをやらせる闇カジノと、フィリピンの本物カジノと中継でつながっているなどと称するネットカジノがひっそり行われている程度です。 負のサービス産業として、かつてヤクザに社会的な需要があったのは債権取り立て、地上げ、倒産整理などです。 債権取り立ては、繁華街のクラブなどで客の何某がツケを溜め込んで払わない。取り立てたら、取り立てた額の半分をやるから、代わりに取り立てて、と頼まれるシノギです。 現在、債権取り立ては弁護士に限り、ヤクザが手を出したらアウトなのですが、短時間で効果が出たのはむしろヤクザのほうだったはずです。ぷよぷよ体型の弁護士がやって来ても屁とも思わない踏み倒し常習の客がいます。彼らが怖がるのはむしろヤクザの暴力でしょう。 地上げは地価が年々上昇していたころの話です。人が住んでいる土地を建物ごと買い上げ、住民に出ていってもらって、更地にすることを狙います。これも不動産業者が交渉してラチが明かないとき、ヤクザが依頼されて出張り、住民を脅しあげ、それでもダメなら糞尿を撒き、火をつけ、身柄をさらうなどの暴力を振るいます。それで出ていってもらうのです。 倒産整理は倒産しそうな会社にいち早く乗り込み、少しの融資を餌に会社の資産を叩き売り、債権者会議を牛耳って自分だけ儲けるシノギですが、これは専門知識が必要なため倒産整理屋という業者が存在しました。彼らがヤクザの傘下に入ったから、倒産整理もヤクザのシノギになったわけです。ヤクザが生き残るためには しかし、この手のシノギはすべて暴対法で中止命令が出され、二度繰り返すと逮捕・禁錮もあり得る犯罪になりました。おまけに何でもないふつうの商売がヤクザに限っては、暴力団の資金源になるという理由で警察の干渉を招き、結果的に正業もダメというのが現在です。 では、ヤクザはどうしたらいいのでしょう。前記した通り、違法だけど、なんとかシノギになるのは覚醒剤ぐらいなものです。しかし、ヤクザ全員がシャブの密売をやれるほど、市場は大きくない。また特殊詐欺はもともと半グレが始めたシノギですが、ヤクザがそれを導入することがすでに始まっています。しかし、特殊詐欺の被害額も近年は減っている現実があります。 今置かれた状態を将来に延長すると、ヤクザは食うな、存在するな、といわれているのと同じです。ヤクザが生き残るためには、せめてヤクザがふつうの商売、仕事をやることを認めようという世論が盛り上がる必要があります。 ヤクザが法令を守るなら、飲み屋をやってもいいし、土建業や人材派遣業、建築物の解体業、あるいは警備業、ビルのメインテナンス業など、負のサービス業ではない、正のサービス業への従事を認めることしかないでしょう。 それとヤクザにとって望ましい制度改正は、組をやめた後、5年間はヤクザ並みに扱うとする各業界の暴排条項を撤廃させることです。広く知られたことですが、今は元ヤクザでも新しく銀行口座を開けません。そのためサラリーマンになっても給与の自動振り込みができない。民間アパートでも借りるのが難しく、車を買うんでもローンを組めず、スマホさえ買えない。 このまま進むとヤクザという職業は存在できず、ヤクザがそのときどきに行うシノギも遂行できない。ヤクザはヤクザから脱落し、半グレに加わり、半グレからも脱落して、単に常習的に犯罪を行う人たちへ零落するはずです。 ヤクザがなくなったおかげで犯罪のない平和な社会が実現するかといえば、単に悪事に手を染めるカタギが最近、増えたってことになるでしょう。半グレでなく、国民の大半が禁止法令を守らない。隙あらば、隣人の物さえ奪って恥じない国民ばかりとなったら、さぞかし日本は住みにくい国になるでしょう。倫理性のない後進国への後退です。※溝口敦/鈴木智彦著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)より一部抜粋
2021.04.03 07:00
NEWSポストセブン
転売ヤーを利用しただけなのに(時事通信フォト)
転売ヤーからゲーム機購入後、カニカニ詐欺に巻き込まれた話
 人気の商品などを転売する人たちのことを、ネットでは蔑みの意味を込めて「転売ヤー」と呼んできた。最近は、転売してもうま味が無いジャンルの商品だと思わせるために、絶対に転売ヤーから買わないようにしようという呼びかけが行われることもある。一方で、どうしてもほしいのだから転売しているものを買っても仕方ないだろうという利用者も後を絶たない。だが、古物商の許可を得て商売をしている転売業と異なり、ネットで特定商取引法に関する記載も個人情報保護方針も表示していないような者を相手に商品を購入することには、たとえその商品がきちんと手元に届いたとしても危険が伴う。ライターの森鷹久氏が、転売ヤー利用後にカニカニ詐欺に遭うなど迷惑なことが続くのはなぜかについてレポートする。 * * * かねてより問題視されてきた「転売ヤー」問題は、特にネット上で要注意の存在とされてきた。それが今では、コロナ禍において必需品であったマスクや消毒液、巣篭もりする人が増え需要が増した人気ゲーム機などの転売騒動が起きたことによりテレビや新聞でも報じられ、ネットには疎い人も含めた国民の多くが知るところとなった。筆者はかつて、この「転売ヤー」に取材をしたことがあったが、彼らの言い分は「商社でも同じことをやっている」「ニーズに応えているだけ」といった感じで、まるで悪びれるそぶりも見せなかった。 転売ヤーたちは、ほとんどが合法の範囲内ではあるが倫理的にはどうかと思える手法を駆使し、莫大な利益を上げている。この現象は、転売ヤーからでも買ってしまう人たちが多くいることを裏付けているとも言えるが、ここに目をつけたのが「詐欺師」だった。「チケットでも人気ゲーム機でもマスクでもいい。とてつもない需要があるということは、多少怪しくともそこに釣り針を垂らしさえすれば引っかかる人はいる。詐欺にはもってこいでしょう」 こう解説するのは、いわゆる「半グレ」と言われる組織に属し、かつてチケットの転売を生業にしていたという男性・江崎拓馬氏(仮名・30代)。最近も、人気アーティストのライブチケットを売ると言って金をだまし取るという事件や、SNSを通じて人気ゲーム機を購入したが商品届かないなど、転売ヤーに関連するトラブルがあとを経たない。ちなみに、チケットについては2019年4月から「チケット不正転売禁止法」が施行されている。 ただ、こうした詐欺や法律違反を除けば、転売ヤーたちが需要に応えているというのは事実であり、一定の存在価値もあるのではないかと思ってしまうような状況もある。福岡県在住の会社員・金井義文さん(仮名・40代)は昨年のクリスマス直前、子供が欲しがっていた人気ゲーム機を入手すべく、近くの電気店、玩具店を十数件も回ったが、どの店も売り切れ。ネットの通販サイトも軒並み同じ状況で途方に暮れていたところ、SNS上で人気ゲームが販売されているのを知った。「定価が3万円ちょっとのゲーム機が、SNS上では5万円で販売されていました。割高ではありますが、子供に約束した手前なんとしても欲しく、藁にもすがる思いで飛びつきました。SNSでのやりとりを経て、指定された口座に入金。怪しい転売屋だし、もし詐欺だったらどうしようという不安はありましたが、無事に届いた。どうしても欲しい場合は、転売屋から買うのもアリだな…と」(金井さん) この「どうしても欲しくて転売屋からでも買う」という気持ちに漬け込むのが、詐欺師である。金井さんはゲーム機の購入時、転売屋に自宅住所と電話番号、メールアドレスを知らせているが、その後、思ってもみなかったトラブルに巻き込まれることになる。「年明けすぐに届いたのはカニでした。代引きだったために妻が支払ったんですが、私には注文した覚えはない。送り主に電話するも注文があったの一点張り、生鮮品で金も払っているしそのまま食べました。すると今度は、証券会社からFX講座を開かないかとか、不動産屋から投資用マンションを買わないかと毎日5本以上電話がかかってくるように……。3月にはマスクと消毒剤が一方的に代引きで送られてきたんです」(金井さん) 家にかかってきた「○○市場」などと名乗る電話で「カニはお好きですか?」と聞かれ、好きですよと答えると代金引換の宅配便でカニが送りつけられる「カニカニ詐欺」は、年末年始に増える魚介類送りつけ商法のひとつだ。購入するとは言っていないので、たとえ代引きでも支払い義務はないのだが、生鮮食品だと受取人が慌てて払ってしまうという被害が続出している。この詐欺は十年くらい前から全国で被害報告が相次ぎ、何度も注意喚起されている。金井家に起きたことは、そこをさらに一歩進み、住所と名前を把握している人にいきなりカニを送りつける乱暴なカニカニ詐欺だ。転売屋を利用するような家庭はどこからの荷物か不明な宅配便も、あまり疑わずに受け取ってしまうと足もとを見られたのだろう。 同じようなパターンでマスクと消毒剤も送りつけられたようだが、この時は金井さんが対応し、身に覚えがないと受け取りを拒否した。振り返ると、怪しい送りつけや鳴り止まない勧誘電話は全て、転売屋からゲーム機を買った後から起きた。前出の江崎氏は、それらの出来事は転売屋の顧客情報が売られている証拠だと指摘する。「転売屋だとわかっていて利用する人たちは、結局脇が甘いんです。冷静に考えれば、グレーな商売をしている人に、自らの名前や住所、電話番号に口座番号まで教えたいわけがない。それなのに、物欲に負けて買ってしまう。こういう顧客はリスト化され、あらゆる場所で共有される。転売屋はもちろん詐欺師にも」(江崎氏) つまり江崎氏が言うには、転売屋は法律を真面目に守っているのではなく違法ではないスレスレを狙っているのだから遵法精神に欠けている。それを利用したことがある客も、自分は欲しいものを買っただけだし誰にも迷惑をかけていないと言うが、市場を平穏に保つために暗黙の了解として守って当たり前とされる商習慣を破っているから、やはり遵法精神に欠けたところがあると言わざるを得ない。さらに、転売がどういう商売かも承知しているから実は後ろめたい気持ちも少しある。違法では無いがグレーなことでも黙って得すればいいじゃないかという浅ましい気持ちは、心の隙間を生み出す。そこを狙って、詐欺師は次のような手法で客の資産を根こそぎ奪いにかかるという。「よくあったのは人気アーティストのチケットを優先的に販売するなどのダイレクトメールを何通か、転売屋の利用客に送っておくパターンです。そのあと別人を装いチケットを買い取るなどのメールを送る。客は、先に届いていたダイレクトメールを思い出し、チケットを購入して転売すれば儲かると考えます。転売屋を利用した客は、転売のうまみを知っているから飛びつきやすい」(江崎氏) 江崎氏によれば、チケットでなくともその時々に人気があるもの、需要があるものなら何でもこうした架空の儲け話に利用されるという。需要が増しているマスクの工場をつくるためとうたって出資をつのる「マスク投資」詐欺も同じで、転売屋を利用した客に投資の案内が回されたという。「転売屋を利用しただけで」新たな被害に遭ったり、事件に巻き込まれる可能性は今も高いと断言できる。違法じゃないからいいだろう、そう思う「隙」を突いてくるのが連中だ。改めて、「転売ヤー」を利用しないよう、注意を促したい。
2020.06.28 16:00
NEWSポストセブン
最新作で悪役を演じる市村正親
『必殺仕事人』、大物が悪役出演の背景に時代劇存続へ思いも
 東山紀之(53才)主演の人気時代劇シリーズ最新作『必殺仕事人2020』が6月28日に放送される。毎回、話題を呼ぶのが大物俳優が演じる悪役だ。今回は、市村正親(71才)が事件のカギとなる悪役を務める。『必殺仕事人』の悪役につい時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。 * * * 毎回タイトルに放送年が記され、年に一度の祭りのような番組になった『必殺仕事人』。今年も「2020」版が登場する。今回は、子を装って親を騙す「親だまし」詐欺が江戸の町で頻発。金ずくで悪を葬る仕事人のひとり渡辺小五郎(東山紀之)が同心として働く奉行所にやり手の新奉行(市村正親)が赴任したが、被害はおさまらない。そこにはやくざ者とは違う「グレ者」がからんでいるらしい。おなじみの仕事人仲間、経師屋の涼次(松岡昌宏)、リュウ(知念侑李)、花御殿のお菊(和久井映見)もそれぞれ事件に関りを持つことになっていく。 市村の奉行は、悪の撲滅を宣言する一方で裏の顔があり、公式HPの本人のコメントによると「とことん悪に」なっているという。その悪っぷりは今年の見せ場になるはずだ。なにしろ2007年に東山らが主演で復活した『必殺仕事人』シリーズは、毎回、大物俳優がめったに見せない「悪役」になるのも恒例なのだ。 2012年『桃太郎侍』で悪を成敗してきた高橋英樹、2013年『水戸黄門』の里見浩太朗をはじめ、竹中直人、奥田瑛二、昨年はついに西田敏行が登場。商才のある若者を食い物にする大商人に。うわー、悪いわー。映画『アウトレイジ』シリーズでは堂々のやくざっぷりを見せていたが、「必殺」で改めて悪人演技にびっくりしたものだった。 大物悪役の起用には、いろいろな意味がある。まず、第一にはシリーズが仕事人たちの前に立ちはだかる悪がでかくないと、話が盛り上がらないということ。仕事人たちのキャラクターは変化しないが、悪は毎回個性豊か。物語に変化と山場を作るのは悪人なのだ。また、大物登場で話題にもなり、ジャニーズファンはもとより、大物が出演した時代劇を長年観てきた中高年層にもアピールできる。俳優陣も一話限りの敵役には、衣装や道具などにも凝って自由に役作りができる面白さがあるという。 しかし、私はもうひとつ意味があると思っている。『必殺』の看板は、1972年にスタートした『必殺仕掛人』から始まり、シリーズの顔となった中村主水(藤田まこと)が初登場した『必殺仕置人』など脈々続いてきたものだ。しかし、近年は時代劇が減少し、京都の『必殺』撮影現場や技術継承が危ぶまれているのも事実。このシリーズに出演した大物たちには、時代劇を守りたいという気持ちがあると思うし、実際、取材でそうした声をよく聞く。 現代の事件や世相、流行を取り入れるのも『必殺仕事人』の伝統。80年代には、窓際族、いじめ、花粉症、悪徳金融などもネタにしている。今年の「親だまし」は「オレオレ詐欺」で、「グレ者」は「半グレ」。「2020」の時代の記録ともなる。今年没後10年となる藤田さんは「仕事人は幸せになっちゃいけない。中村主水は、どこかの側溝で人知れず冷たくなっているような最期が似合う」とよく語っていた。必殺シリーズには、パロディ的な面白さとともに、冷たく暗い面もある。そこが真髄なのだ。世相だけでなく、大物キャスト殺しの歴史も刻む令和の仕事人たちの「仕事ぶり」を今年もしっかり確認しなくちゃ。
2020.06.23 16:00
NEWSポストセブン
外出自粛で住宅街では酒などの空き缶ゴミが通常の倍以上に増えた(時事通信フォト)
コロナ禍で進行する各種の依存症 違法薬物の流通増とも
 緊急事態宣言の解除がすすめられ、毎日、報道される新型コロナウイルスの新規感染者数も減少している。そのことで、もうすぐ苦しい自粛生活から脱出できると考える人が多いだろうが、この疫病によって傷つけられた人々の心は、すぐに元通りとはいかないようだ。ライターの森鷹久氏が、タバコ、睡眠薬、精神安定剤、はては違法薬物への依存がコロナ禍によって加速している様子をレポートする。 * * *「テレワークが続き、ずっと自宅から出られないストレスから、結局またタバコを吸い始めてしまったんですよ。10年前に禁煙して、以降は一本も吸っていなかったのに……」 苦笑いでこう打ち明けたのは、都内の大手テレビ局勤務のニュースディレクター・野原祐一郎さん(仮名・45才)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会社の喫煙所は多くが閉鎖され、それをきっかけに禁煙にチャレンジするという同僚が少なくない中、野原さんは逆戻り。4月中旬、コンビニでなんとなく手にとってしまったタバコは、今では1日半箱ほどを吸ってしまうという。 都内の通信系企業に勤める堀川達也さん(仮名・30代)は、仕事のリモート化による家ごもりが一ヶ月以上続き、酒量は以前の三倍近くまで増えたと話す。「仕事が終わった瞬間に缶チューハイを開けてしまう。仕事の時間と家の時間の線引きが曖昧なんで、酒を飲むと仕事が終わった、という気になるからでしょうか……。以前は、飲んでも500ミリリットル缶3~4本だったのが、今では多い時で10本近く飲んでしまう。話し相手もおらず、寝るまでダラダラして。体調は明らかにおかしくなってきていますが、他にストレス解消の方法がない」(堀川さん)「コロナのせい」といえば責任転嫁に聞こえるかもしれないが、コロナがきっかけで、再び「舞い戻ってしまった」という笑えない状況に追い込まれている人々がいる。都内在住の通信会社勤務の契約社員・伊藤百合奈さん(仮名・30代)は、二十代の頃に陥った睡眠薬依存が、コロナ禍を期に再発した。「システムエンジニアをしていたのですが、3月ごろから契約社員が解雇されるという噂が飛び交い、4月からはリモートワークになりました。残業もなくなり収入は減るし、このまま職を失ったらどうしようと不安になって、眠れなくなったんです。ゴールデンウィーク前にかつて通っていた心療内科に行き、一週間分の処方箋を四日で飲んでしまいました」(伊藤さん) 5月いっぱいは「リモート勤務」を命じられているが、それ以降も仕事があるかわからないという不安は日に日に増大化し、伊藤さんに重くのしかかる。そして薬の量も増え続けていると話す。「多忙だと忘れてしまうのですが、ヒマができるとマイナスなことばかり考えて眠れなくなる。かつて睡眠薬依存になったのは、うまくいかない就職活動が原因でした。せっかく仕事も順調だったのに……。不安定な状態が続くようなら、向精神薬にも頼らざるを得ない。それは避けたいんですが」(伊藤さん) 大手紙の厚労省担当記者は、都内の一部の病院ではコロナ禍の前後で「依存症」の兆候を示す患者の数が「目に見えて増えている」と話す。特に顕著なのは、再診の患者数だという。「コロナに対する不安から、眠れない、気分が沈むという一般の方もいますが、もともと依存症にかかっていた人たちの回帰が、一部のクリニックで起きている。医師によれば、ほとんどは軽微な症状ではあるものの、かつて睡眠薬や向精神薬に依存していたような患者さんが、再び訪れてくるパターンが目立つといいます。仕事が減った不安を覚せい剤や大麻など、違法薬物を用いて処理しようとして検挙されたパターンも確認されています。常習者というわけではなく、何年もやめていたのに、です。アルコールの摂りすぎをやめられず、相談してくる患者もじわじわ増えている。全てがコロナのせい、とは断言はできませんが、遠因になっていることは確かです」(大手紙の厚労省担当記者) 都内のメンタルクリニックに通院する神奈川県在住の自営業・シュウさん(40代・仮名)も、コロナ禍の影響で収入が激減。自宅でぼんやり過ごす日々が増えたところ「魔が差し」そうになることは、一度や二度ではない。「不安でしょうがない、時間は有り余っているし自宅から出られないとなると、考えてしまうのはやはり薬物のこと。かつて覚せい剤とコカインを使用して捕まった経験があるんですが、もう10年以上、まったくやっていません。いわゆる『フラッシュバック』が起きたのは、今回が初めてです。以前は散歩に出なさい、趣味に没頭しなさいと先生に言われていたんですが、コロナでそれもできない。不安になって診てもらいにきたのです」(シュウさん) 実際に「違法薬物」の流通量は増えているのか。かつて薬物売買に関与していた半グレグループ幹部・U氏が説明する。「明らかに増えて、薬物の単価まで上がっています。末端価格が一グラム7000円だった大麻は、今は1万円でも買い手がつくほど。海外では、青空の下で大麻を吸ってパーティーをやったりしますが、日本における違法薬物の消費は、摘発から逃れるため家の中でこっそり行われます。薬物は思わぬ巣篭もり需要というわけです」(U氏) また、2000年代後半以降の違法薬物の流通は、大部分がネット上で行われてきた。ネット上で注文し、運んできた売人から購入したり、宅配便で届けてもらうパターンであるが、今脚光を浴びている飲食物などの「宅配システム」そのものだ。「売人の数も足りなくなって、ネットを通じて運び屋が集められています。ウーバーイーツみたいに、飲食店の出前を装い、朝から晩まで堂々と薬を運びまくっている奴もいます」(U氏) 我が国における新型コロナウイルス感染は、少なくとも一定の「押さえ込み段階」に入ったと見られてはいる。だが、コロナをきっかけに墜落してしまった人、再び泥沼に足を救われた人たちは、コロナ後の世界でどう生きてゆくのか。
2020.05.26 16:00
NEWSポストセブン
(写真/アフロ)
ヤクザとコロナ 儲け機会を逸しクルーズ船清掃志願も頓挫
“究極の自由業”であるヤクザはカネの匂いに人一倍敏感だ。新型コロナウイルスの感染が拡大し、「カネで安全が買えるなら安いもの」と考える人が増える状況は、暴排条例によるシノギの減少に苦しむ暴力団にとって、絶好のビジネスチャンスのはずだ。彼らはどう動いたのか。それを追うことで、“ヤクザの現在地”が見えてくる。フリーライター・鈴木智彦氏が“ヤクザとコロナ”についてレポートする。 * * * 暴力団にとって中国発の新型コロナウイルス騒動は対岸の火事だった。昨年12月に新型ウイルスの存在が確認されると目端の利く末端組員はすぐにマスクを買い占めたが、商品を中国に送って換金するパイプがなかった。 世界中に感染が拡大した今回の騒動を通じて明らかになったことのひとつは、日本のヤクザが“国際ビジネス”に疎いという実情だった。 もちろん、沖縄の暴力団の一部をはじめ、香港やマカオの中国系マフィア組織と交流を持っているキーマンは各組織にいる。が、揉め事の仲裁ぐらいで、民間レベルで中国との貿易がライフラインの一部になっている現状と比較すれば、裏社会の連携はほとんど進んでない。日本の“YAKUZA”は世界的なネームバリューを持ちながら海外進出に消極的でガラパゴス化している。「日本人のコミュニティで、日本人を恫喝するならともかく、ヤクザの名前は海外でほぼ通用しない。語学に堪能な人間は、もはや暴力団のような旧態依然の組織に魅力を感じない。半グレのように曖昧な形で自立し、必要がある時だけ暴力団の看板を使う」(中国人によるエステ店を営業する元暴力団の経営者)◆姐さんからの対策です 暴力団が頻繁に中国へ出かけていたのは5年ほど前である。ヤクザは自分の好きな焼酎を海外へも持参し、現地の有名レストランに持ち込むなどトラブルメーカーなので、こうしたワガママ三昧に対応できる業者の情報が共有され、ヤクザ御用達の旅行代理店や現地ガイドも誕生した。お目当ては最低賃金で酷使できる技能実習生集めやインターネットカジノの拠点作り、美術品など高額商品の売買、闇での臓器売買など多岐にわたったが、単発の博奕のようなもので、長期的な利益を生み続けるシノギはほとんどなかった。 今回、中国人観光客を使って日本国内でマスクを買い占めたマカオの組織幹部は「日本のヤクザは態度がでかい割に根性がない。言葉が喋れずハングリーさもない。今回もヤクザは儲け話に乗り遅れた」と辛口である。日本でもマスクの売り切れが続くようになると、このマカオの幹部はヤクザにも声をかけたという。「結局、どこにも売ってないとヤクザはマスクを集められなかった。中国人マフィアならこの機会に盗んでも集めようとするのに」 国内で陽性患者が増え、マスクの転売が話題になると一部の組員は、“ラクして稼ぎたい”と考えたようで、あの手この手の儲け話が流れてきた。「中国政府公認の検査キットを手に入れたから医療関係者を紹介してくれ」「利用者減でLCC(格安航空会社)が国際線乗り放題の年間パスを売っている」など、ヤクザお得意の「カネを先にくれ」という詐欺の話ばかり。 挙げ句の果てには、〈引退された親分の姐さんからです〉と、題された“コロナウイルス対策”の文面がLINEで転送され始める。今回の騒動で出回った有名なデマの“ヤクザバージョン”だ。姐さんの知り合いが武漢のコロナウイルスの研究者で、〈武漢ウイルスは耐熱ではなく56度以上で殺される〉と続く。高齢化が進み、定例会や盃事など集団で集まることが多いヤクザにとって、一般人以上に目に見えないウイルスへの恐怖を感じている表れだろうか。 一方で、組織としての暴力団は阪神大震災や東日本大震災など災害時と似た動きを見せた。関東に本部を持つ広域団体は、あくまで有志の活動としながらも傘下組員をフルに動員し、3万枚近くのマスクを集め、無償で中国に送った。「マスクを中国共産党の家族などが独占すると貧困層に渡らないため、人道支援の民間団体を選んで送るようにした。会の名前ではなく、あくまで有志の支援だったが、ヤクザの美学を考えれば、会長名で送ったはず」(発送の手伝いをした神奈川県の貿易商)◆ダイヤモンド・プリンセスの清掃を 国難が起きると、暴力団は国の役に立ちたがる。具体的には支援物資とボランティア活動だ。トップダウン組織のメリットをフルに発揮し、決定や行動は迅速である。大災害のたび、反社会勢力と呼ばれるヤクザが立ち上がり、全国各地にいち早く支援物資を送る様子は、警察や一般メディアにとって不都合な事実に違いない。 今回も、暴力団の支援活動はマスクだけに留まらなかった。「マスクを送ったあとも、汚れ役は我々のような人間がやるべきだと提案した幹部がおり、横浜の大黒ふ頭に停泊した『ダイヤモンド・プリンセス号』の清掃を志願しようとしていた。暴力団に美談をかっさらわれれば世界的な笑いものになるため、政府が応じるはずもない。ただ、もしコロナの致死率が高く、もっと危険なアウトブレイクだったらどうなっていたか」(当該暴力団と関係が深い神奈川の企業家) ヤクザらしい義侠心を売名行為と一蹴するのは容易である。しかし、人間は悪に塗れていても善を希求する二面性を持っている。なんであれ単純な二元論で人間を語るのは短絡だろう。 暴力団社会は高齢化が進み、慢性的に若い組員が不足している。60、70代も珍しくなく、コロナのクラスターになれば大幹部がコロリと死ぬかもしれず、定例会などの行事は、政府の自粛要請に合わせ、ほとんどの指定暴力団が中止した。抗争中の2つの山口組は1月に「特定抗争指定」を受け、総本部をはじめ多くの事務所が使用できず、“大規模イベント”はもともと開けない状況だが、抗争事件も影を潜める。 暴力団が小銭稼ぎを自粛し、政府に協力している事実は、それだけコロナ騒動が深刻なことを裏付ける。※週刊ポスト2020年3月27日号
2020.03.18 07:00
週刊ポスト
特殊詐欺アジトからの押収物。組織として“営業”していたことがわかる(時事通信フォト)
特殊詐欺 「金主」が存在する限り一向に減らないのが現実
 特殊詐欺グループが逮捕されたときのニュースでくりかえされる「リーダー格」という言葉を不思議に思ったことはないだろうか。なぜ、単にリーダーとはせずに「格」をつけるのか。それは、リーダー格と呼ばれる人物が、正確にはそのグループのトップとは言い切れないからだ。ピラミッド型だと言われる特殊詐欺グループのてっぺんに存在する「金主(きんしゅ)」とは誰なのかについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。 * * * いわゆるオレオレ詐欺など「特殊詐欺」は、金に逼迫した若者たちが裕福な中高年を狙う卑劣な犯罪、と言う風に世間には認識されている。実際に特殊詐欺で捕まるのは、ごく普通のどこにでもいそうな若者、そしてうだつの上がらなそうな暴力団員や半グレばかりで、結局こうしたどうしようもない属性の人間が手を染めている、と呆れる人も少なくないだろう。 しかし、彼らは犯罪組織の末端中の末端。連中のバックには、あまりに計算高くもっと凶悪で巨大な“金主”という存在がある──。「例えば、今、流行ってるようなタイやらフィリピンから日本に詐欺電話をかける方法。これはあっち(の国)の組織と繋がってなければ無理だし、拠点となる家を借りたり、電話やパソコンなどの道具、かけ子の募集費用や渡航費用、当面の運営費だけ考えても“億”はいる。そんじょそこらの半グレ風情が集まって、はいやりますよって言ってもできないんですよ」 こう話すのは、かつて特殊詐欺に関わっていた経験のある元暴力団関係者・N氏(40代)。もっとも、N氏が関与していた時代は、現在よりもローカルな単位で、リーズナブルに詐欺が行われていたと説明する。「まず、ハコ(拠点)、道具(電話帳リストや電話)、人間(かけ子や出し子)の三点セットを準備するところから始まるのですが、全て国内で完結します。取り締まりが厳しくなりハコが警察に狙われ始めると、ハコを仕切る現場の責任者の裁量で、かけ子がビジネスホテルやレンタカー、キャンピングカーを拠点にしたりして、分散していきました。道具、特に電話も入手が困難になり、買えてもバカみたいに高い。受け子や出し子のリスクも高くなる一方で人集めも厳しい。そこで考えられたのが、中国を拠点にした詐欺です」(N氏) 筆者の調べによれば、2015年頃から、日本を離れ海外に拠点を移す詐欺グループが増え始めた。現地当局や、反社勢力の協力者に渡す“賄賂”分なども含め、それなりの金はかかるが、少なくともハコの運営者やかけ子が逮捕されるリスクを抑えられるのだ。「結局、まずは電話をしないと始まらない。架空請求ハガキ、架空請求メールよりは格段に実入りがいいんです。いくらか安心して電話ができるようになったら、今度は日本国内で受け子や出し子を探す。まあこの辺は、SNSで適当に引っ掛けた人間を使えば良い」(N氏)“使えば良い”と軽くいってのけるN氏だが、この結果、出し子や受け子のトラブル、中高生の参入、そして「アポ電強盗殺人」などが起きてしまった。以前筆者が取材した関係者は「強盗は想像したが殺人(の発生)は想像以上」と驚きを隠さなかった。 ところで、ニュースなどではほとんど論じられないことだが、いくら金に困っているとはいえ「殺し」までやってしまうほど、若者は困窮しているのか。「金持ちの老人が憎い」という一部の若者が抱く妬みこそが、モチベーションになり得ているのか。「はっきり言うと、特に出し子や受け子はぼんやり“金が欲しい”という人たちばかりです。中には、明日までに10万必要、といって詐欺の門戸を叩く人もいますが、生きる死ぬではない。すると、どうやってタタキ(強盗)や殺しまでするに至るか。それは、金主に絶対に逆らえないという運営側が、彼らにハッパをかけているからに他ならない。詐欺のリーダー格が逮捕された、なんてニュースで言ってますけど、彼らの上には金主がいる。ここから出資された金を増やして上がりを出さなければ、リーダー格はその身すら危ない。それこそ、暴力で屈服させたり、あるいは猛烈な社員教育的なことをやって……。とにかく稼ぐことが第一だと、手下に叩き込む」(N氏) 特殊詐欺グループの拠点が摘発された、というニュースで見たことがある読者も多いだろう。拠点内には「目標◯◯◯円」「売り上げ◯◯◯%突破」などといった張り紙が掲げてあることも少なくない。中では、いっぱしの営業マンよろしく、詐欺のための、そしていかに多くの金を掠め取るかの教育がなされている。もちろん現場組は「儲けるため」にやっていることだが、リーダー格以上になれば、儲けを出し、金主に上納することが至上命題となる。 金主と書いて「きんしゅ」と呼ぶその言葉は、事業や興行主に資金を提供する人の呼び名だ。詐欺の場合は当然、その詐欺を実行するにあたり、根本の準備資金を提供する人たちのことだ。その人がいなければ詐欺グループは設立されず、実行する力もない。 では、金主とは一体、具体的には誰なのか。「昔は有名暴力団の二次団体、三次団体のエースが関与していたと聞きますが、最近は金主が一人ではない、という場合もあります。例えば、中部地方のある反社勢力は、一般人が代表の法人を立ち上げ、投資名目で一般人から金を集め、その資金を詐欺に回しているといいます。金主のほとんどは、表向きは自分の金が詐欺に使われているとは知らないことになっているし、知ったところで、金が増えて返ってくるのなら、別にどうだっていいんですよ」 詳しいことは知らないけれど、儲かるビジネスに出資しているだけ。もし、出資先のビジネスが違法なもので、摘発されるようなことがあったとしても、そのビジネスにはまったく関係していないから問題ない。金主の本音は、そんなところか。そして、金主まで自動的に取り締まれる法律も整っていない。 もっと言えば、そういうことはすでに織り込み済みであり、詐欺の末端要員からリーダー格、そしてそこから金主に至るまでに、何人の人間が関与しているか、どれだけ警察当局が捜査しても明らかになることがないほど、組織そのものが複雑に形成されている。反社系の金主であっても、末端に“詐欺費用”が流れる過程で、いわゆる「善意の第三者」に位置する一般企業や一般人を多く巻き込む。こうすることで、末端やリーダー格が逮捕され、当局の苛烈な突き上げ捜査によって全てを吐いたところで、善意の第三者より上に、捜査が進むことはない。この善意の第三者も騙されて詐欺スキームの仕組みに取り込まれているパターンが多いからこそ、末端やリーダー格逮捕以上のニュースが出る訳がないのだ。 名古屋市近辺の反社事情に詳しい男性がこう言うように、例えば全国規模のニュースで報じられるような大規模な投資詐欺事件などで得られた金が、犯罪収益として当局に確認されないまま、次の詐欺の資金に充当されている場合もある。結局、詐欺で得られた金は、新たな詐欺に利用され雪だるま式に膨らんでいく仕組みであり、その過程で多くの被害者を、そして金主やリーダーと呼ばれる人々に焚きつけられた多くの加害者が生み出される。これが、特殊詐欺事件が一向に減らない、そして新たな詐欺が次々に生まれる理由なのだ。
2020.02.23 16:00
NEWSポストセブン
本家には専属のコーディネーターが?
ヤクザ業界の服装マナー「1年目は紺スーツに白シャツ」
 警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回はヤクザ業界のファッション事情を、幹部に直撃。 * * *「LEONファッションですよ」 ヤクザのファッションには流行があるのか?と聞くと、暴力団幹部は開口一番こう答えた。『LEON』といえば“ちょいワルおやじ”というキーワードを世に広めた男性ファッション誌だ。不良っぽくも都会的でセクシーなカッコいい大人のイメージで、イタリア出身のパンツェッタ・ジローラモ氏がイメージキャラクターを務めている。「ヤクザが好むのを『LEON』が載せるのか、『LEON』に載った物をヤクザが身につけるのか、そこはわかりませんけどね」『LEON』にとってはあまりありがたくない話だろうが、どうやらヤクザファッションのトレンドは『LEON』の誌面とリンクしているらしい。 また、ちょいワルはちょいワルでも関西と関東では好みが異なるという。「大阪、名古屋はどちらかというと派手。大阪では少し前まで原色を好み、やたらとブランド物を着ていたけど、コピーも多かった。東京はなるべく目立たないようにが、昔からのヤクザスタイルだ」 関西ならコピー品を手にいれるのはたやすいという。「生野、鶴橋に行けば何でもある。韓国あたりから入れているんだろう」 自分がコピー品を身につけたとしても、人に譲ることは絶対にしないと幹部は話す。「どうせあいつからもらった物だ、きっと偽物だと言われれば、自分の価値を下げることになる。30万もするモンクレールのダウンのA級コピー品が3万円だと言われても買わないね。だってさ、コピーよりユニクロのダウンのほうが断然暖かいんだぜ」 普段は渋めのハイブランドを着こなしているその幹部だが、親分の所に行く時は地味な格好をするという。「親より高い物は着ない。周りにやっかまれるから、おしゃれで派手な格好もしない」 目上と会う時は控えめにというのは、どの業界も変わらないようだ。 山口組では場合によって、制服ならぬ指定のコーディネートがあると話してくれたのは山口組に近い暴力団関係者だ。「不祝儀など義理の時は、黒いスーツに白いワイシャツ。ワイシャツのボタンは白でなければならず、クラリーノみたいな靴と決められている」 関係者曰く“クラリーノみたいな靴”とは、学生が履くようなシンプルな黒の革靴をイメージしてもらえばいいだろうか。「このクラリーノがなかなか難儀でね。大勢が集まると、どれも同じだから自分の靴がどこにあるのかわからなくなる。下足番はいるんだが、会合の時は全員中に入ってしまうから、中座する時など靴を探すのに苦労する。名前を書いておく、赤や青の中敷きを入れておくなどそれぞれ工夫するが、オーダーメードで内側の革を黄色や赤にする者もいる」「直参1年目はさらに制約がある。服装は紺のスーツに白のワイシャツと決められ、ボタンダウンはダメだ」“直参”とは組織のトップから直接盃を受けた者のことで、山口組でいえば“プラチナ”になる。プラチナになったとはいえ、まだ1年目の組長は、集まりや会合となれば指定されたファッションで出向かなければならないのである。「好き勝手するのがヤクザの本分なのに、あれはダメ、これもダメ。あげくには、義理の時の服装まで決められ…」 不平不満はあるようだが、誰もそれを口にはしない。それがヤクザ社会である。 服装に厳しい決まりがある山口組だが、時折メディアで目にする六代目山口組の司忍組長の服装は、ちょいワルファッション以上にインパクトがある。「本家にはコーディネーターがついている。家だけでなく、移動するワゴン車の中にもズラリとスーツを運び入れ、その日に着る物をコーディネーターが決めている」 ネットで検索すると表れるボルサリーノ風の茶色の帽子や首にかけた白の長いマフラーといった独特のファッションは、コーディネーターがチョイスしているのだそうだ。 この“コーディネーター”というのは専門のスタイリストではなく、センスのある組の者が務めているらしい。ちなみに本家がスーツを仕立てているブランド名をいくつか挙げてくれたが、どれも庶民にはそうそう手が出せないイタリアのハイブランドばかりだった。「プラチナの人が集まれば車、服、時計に病院や薬の話ばかり。車は昨今、アルファードのような車が主流。色は黒や白。乗り降りが楽だし、車内が広いからね。人が乗っていれば自分も欲しくなる。人が着ていれば、身につけていればそれが欲しくなる」「いい車に乗って、いい物を着て、いい店で飯を食って、いい女を連れて…。その人みたいになりたいと見た目で憧れる。しゃべり方から何から何までマネてみる。ヤクザの業界は特に、リスペクトしている人のマネから入るのが近道だと考えられている」 だが最近、若い者がマネしたいと憧れるヤクザは減っているという。「昔は憧れるような組長がたくさんいたんだが、今は男がカッコいいと憧れるカリスマ性のあるヤクザが少なくなった。リスペクトされなければ人はついてこない。憧れもないのにわざわざヤクザになろうとする若い者は、今どきいない。半グレのほうがよほど自由で楽に稼げるからね」 暴力団排除条例などでシノギがなくなり稼げなくなったと言われるヤクザ業界は、今や一時の勢いを失い縮小傾向にあるが、人が減っている理由はどうやらそれだけではないらしい。
2020.01.25 16:00
NEWSポストセブン
安倍政権「言い逃れ」文学賞 大賞は菅氏「反社の定義ない」
安倍政権「言い逃れ」文学賞 大賞は菅氏「反社の定義ない」
 2019年も政界では多くの不祥事や失言が生まれた。本誌・週刊ポストは当事者たちがそれをどう釈明、弁明、言い逃れしてきたかを検証し、「言い逃れ」文学賞を贈って国民の戒めとしたい。では、本誌編集部が選んだワースト3を発表しよう。【3位】◆安倍晋三首相「収支トントンなら報告しなくていい」 安倍首相は毎年、「桜を見る会」に地元後援会会員を大量に招待し、今年は前夜にホテルニューオータニで盛大な前夜祭を開いた。そうした後援会ツアーが政治資金収支報告書に記載されていないことに批判が高まると、釈明会見(11月15日)を開いた。そこで重大な発言をした。「政治資金収支報告書への記載は、収支が発生して初めて記入義務が生じます。(中略)前夜祭についても、ホテルが領収書を出し、入ったお金をそのままホテルに渡していれば、収支は発生しないわけでありますから、違反には全く当たらない」「収支トントンなら報告しなくていい」という開き直りだった。 政治資金規正法は議員が収支報告書で収支を報告することで、政治資金の流れを透明化し、献金の集め方や使い途が妥当かどうか国民が判断できるようにする仕組みだ。そうした法の精神を否定するものだ。 しかも、安倍首相は「明細もない」(11月18日)と明言しており、報告書に記載がなければ、収支がトントンだったかどうか誰も検証できない。 この言い訳がまかり通るなら、規正法は空文化し、日本の政治は昔の“金権政治”に逆戻りしてしまう。【準大賞】◆麻生太郎副総理「報告書は受け取らない」〈年金だけでは老後資金が2000万円不足する〉。金融審議会の報告書の内容は大きな波紋を巻き起こした。 この報告書が公表された当初、麻生氏は「100歳まで生きる前提で自分なりにいろんなことを考えていかないとダメだ」と内容を支持していた。 ところが、高齢者を中心に不安の声が強まると、「政府の政策スタンスと違う報告書は受け取らない」(6月11日)と拒否した。 政府の審議会は、政策を決定する前に広く国民から多様な意見を汲み上げるために開かれる。この報告書も大学教授やエコノミスト、大企業経営者など21人の有識者によってまとめられたものだ。 それを「政府の政策スタンスと違う」という理由で受け取らなかった麻生氏の態度は、最初から違う意見を聞かないという民主主義の否定そのものだ。【大賞】◆菅義偉官房長官「『反社』の定義は定まっていない」「桜を見る会」問題の対応は泥縄に陥り、首相以外にも政治家の数々の失言、虚言、居直り、言い逃れを生み出した。 役人はそうした発言に辻褄を合わせるために、反社会勢力やマルチ商法経営者を誰が招待したかの記録が残る招待者名簿をシュレッダーにかけなければならなかった。だが、野党議員の提出要求で「紙の名簿」が廃棄された後も、政府のサーバーには最大8週間、バックアップデータが残っていた。国会での検証は十分可能だった。そこで対応にあたる菅官房長官は2つの重大な言い逃れをした。「バックアップデータは行政文書には当たらない」(12月4日) 国会議員からの資料要求には行政文書を前提に対応しており、行政文書ではないバックアップデータは国会提出の対象ではないと開き直ったのである。 もう一つは桜を見る会への「反社会勢力」招待問題で、菅氏は会見で「結果的に入っていた」といったんは出席していたことを認める言い方をした。ところが、その後、政府は「反社の定義は困難」とわざわざ閣議決定まで行ない、こう居直った。「反社会的勢力の定義が一義的に定まっているわけではない」(11月27日) 日本は世界でも数少ない政府がマフィア(暴力団員)を「指定暴力団」と認定する国家で、認定されていなければ犯罪を犯しても「暴力団組員を名乗る男」と報じられる。そうした厳密な定義が治安の根幹を支えてきた。 とりわけ「半グレ」と呼ばれる反社集団が治安を脅かしている中で、政府が閣議決定で「反社の定義」を否定したことは国の治安の根幹を揺るがしかねない事態なのである。この発言は民主政治の危機を招く「大賞」にふさわしい。 憲政史上最長となった安倍政権は、発足以来、数々の政治・行政のモラルを破壊してきた。「大臣室での現金授受」の甘利明氏や「国会でのウソ答弁」の稲田朋美氏ら不祥事で辞任した側近大臣を重職に復権させ、首相を庇った官僚をどんどん出世させる。その結果、政界にも、霞が関にも、「総理を守るためにやった不正は許される」という“忖度無罪”の考え方が蔓延している。 財務省の公文書改ざんも、厚労省の統計偽装も、そして桜を見る会の“反社容認”も、そうしたモラルハザードが招いたものだ。 2020年は政治の危機を食い止められるか、正念場になる。※週刊ポスト2020年1月3・10日号
2019.12.27 07:00
週刊ポスト
詐欺犯はそのときどきの時事ネタを絡めた嘘の話を持ち掛けてくる(写真はイメージ)
情報商材販売から特殊詐欺を経て殺人未遂を犯した男の転落
 子育て中の親は子供たちに「嘘つきは泥棒の始まり」と言い、平気で嘘をつくようになると泥棒も平気でするようになる、つまり嘘をつくのはよくないと戒める。それを守れず嘘をついて泥棒をするようになっても、人を襲ったり、殺そうとするところまでは至らないのが普通だと思われてきた。犯罪を実行するには高い壁が存在すると言われてきた。ところが最近は、その壁をいとも簡単に乗り越える元・普通の人たちがいる。ライターの森鷹久氏が、情報商材の販売から殺人未遂事件へと駆け抜けてしまった男の転落をたどった。 *  *  *「やばい奴だとは思っていましたが、まさかここまで…。奴に何があったのか、地元では誰も知る人はいません」 タイの拠点から日本国内に特殊詐欺の電話をかけていた数十名の日本人が逮捕された事件で、アジトである部屋の契約に関わっていたとして逮捕された福岡県出身の男(30)が、今度は殺人未遂で逮捕された。昨年11月、仲間と共謀して、大阪市に住む男性の頭をバールで殴り殺害しようとした、というのだ。筆者も特殊詐欺事件の取材を続けており、男の人となりなどを関係者に聞き取っていた最中だったが、まさかと驚くしかなかった。冒頭のコメントは、男を知る福岡在住の知人男性によるもの。知人男性が続ける。「昔から金にルーズなところはあったが、ひょうきんで後輩の面倒見も良かった。ただ、金でトラブって逃げるように広島あたりに行った後、人が変わったように、友達や後輩を”ビジネスしないか”と頻繁に誘っていた。奴に数十万円払ったとか、中には100万円近く預けた知人もいました。投資だということでしたが、よくわからないままに金を渡したそうです」(知人男性) 周辺取材で、当時の男の財布が常に数十万の札束でふくれ上がっていたという複数の証言が出てきた。男から”ビジネス”に誘われた人々は、福岡・中洲のキャバクラなどで、一晩で数十万円をポンと支払う男を見て「金持ちだ」とか「俺も成功したい」と思い、金を預けてしまったのだという。男と共に「情報商材ビジネス」を手がけていたという男性・X氏が明かす。「彼とは投資ビジネスのセミナーで知り合ったと記憶していますが、あまり目立つ人ではありませんでした。実際、ビジネスの方でも実績は芳しくなく、私が彼に紹介したビジネスを巡って、投資した人たちから追われている、というような話も聞きました。正直、情報商材ビジネスそのものは情報弱者を狙い撃ちにしたもので、儲かるのは一部の人たちだけ。私は嫌になってやめましたが、彼も結局借金まみれになり、いつの間にか消えた。でもまさか、殺人未遂とは……」(X氏) 情報商材ビジネスとは、その名の通り「情報」を販売する商売だ。株などで儲かる方法とか、病気が治る方法、人生で成功する方法などの情報を、現在では主にネットを使って販売するのが主で、そのほとんどが「マルチまがい」のビジネスと見られる。マルチやねずみ講と同様に、自身がその情報を購入し、自身の紹介で同じ商品を他者に販売すれば、売り上げのうち何割かが報酬で入ってくる。他者が別の他者を呼び込めば、自身にもまた何割か入る、などと説明され、いかにも楽して不労所得が得られると勘違いし、今日でも多くの人が足を踏み入れる。相手を騙すつもりで参画する人もいれば、世間知らずから本気で儲かると信じてハマる人だっている。 男がどうだったかは定かではないが、より手軽に、そして短時間で大金が得られるなどと思い、情報商材ビジネスというグレーな世界に入ったことは間違いない。だから特殊詐欺に関わることは、それほど不思議ではないと、その世界に関わった人はみるのだ。 たとえば、特殊詐欺のかけ子や受け子をして誰かが逮捕されたとしよう。一般的な周囲の反応は「特殊詐欺で逮捕されるなんて、終わっている」というものに違いない。しかし、筆者が取材してきた感覚では違う。特殊詐欺に関わった人物にはたいてい、過去にも詐欺に関わった経験があり、彼らを知る人たちは新ビジネスに取り組んでいたのかという程度の感想を漏らす。そして、いったん詐欺の実行側にまわると、ずっと何らかの詐欺に携わることが多い。詐欺師は一生詐欺師、だった。ところが、最近ではどうも様子が違う。 今や特殊詐欺は、凶悪犯罪への入り口だ。詐欺を経て、違うジャンルのさらに凶悪な犯罪者へと成り果てる。その凶悪犯罪者へと転がってしまうのは、もともと犯罪そのものと縁が薄かった一般人が多い。 かつて、特殊詐欺は暴力団関係者や、それに近い半グレによって行われていたが、近年では、SNSなどを使って一般人が関わるようになった。もっともそれが顕著だったのは、昨年、東京・江東区で発生した「アポ電強殺事件」だ。特殊詐欺の手法を用い、高齢者宅や留守宅を狙った強盗事件。もはやなんでも有りになったとかと、世間も、司法当局でさえ驚いた。「行くとこまで行った感じですね。情報商材ビジネスをしていると、人を騙す感覚が薄れます。こうなると、次は詐欺をやっても平気になる、詐欺の次は空き巣だってやるでしょう、その次は…とうことでしょうか」(X氏) 逮捕された男は、以前から周囲に「暴力団と仲が良い」などと吹聴していたようだが、実際には根は明るいが全てがデタラメ、というワルぶって見せるのが好きなだけのお調子者だった。金に困り情報商材というグレービジネスに一縷の望みを見たがやはり失敗、その時点で相当額の借金も抱えていたとみられる。そうして、特殊詐欺の世界に足を踏み入れ、殺人未遂事件まで起こすほどに堕ちた。 それがどんなに小さく細いものであっても、悪の道に足を踏み入れると、必ず、誰でも、自身が破滅するということを覚えておくべきだろう。
2019.12.14 16:00
NEWSポストセブン
【動画】今井絵理子 半グレリーダー 疑惑男性との写真流出
【動画】今井絵理子 半グレリーダー 疑惑男性との写真流出
 元「SPEED」のメンバーで、全国区の知名度を誇る今井絵理子参議院議員が、笑顔でガッツポーズをする写真が物議を醸しています。 写真にはA氏を中心に、今井議員と沖縄選出の宮崎政久・代議士の姿。県警関係者によると「A氏は金融業や飲食店経営、観光業などを手広く展開してきた人物。4年前に、金融業のトラブルが発端で、知人男性に暴行を加えた上に手足を縛って拘束したとして那覇署に逮捕されました」とのこと。 A氏は不起訴となりましたが、半グレグループとみられており、写真が注目されることになりました。
2019.12.09 07:00
NEWSポストセブン
芸能界の薬物事件、転機は酒井法子&押尾学逮捕の2009年
芸能界の薬物事件、転機は酒井法子&押尾学逮捕の2009年
 有名人による薬物事件が絶えない昨今。2019年は3月にピエール瀧、5月に元KAT-TUNの田口淳之介と小嶺麗奈、11月にスノーボード選手の國母和宏、沢尻エリカが逮捕されている。 芸能人と違法薬物の関係を振り返る上で、今から40年以上前の1977年ほど重要な年はない。 その1年間は圧倒的に芸能界と薬物報道一色であった。歌手の井上陽水の大麻事件に始まり、内田裕也、研ナオコ、錦野旦、美川憲一と、有名芸能人が続々と麻薬事件で逮捕され、関係者を含めた60人以上が摘発されたのである。当時の芸能マスコミは、売人から流出したとされる「大麻顧客芸能人150人リスト」の存在を指摘した。 1990年には映画『座頭市』で知られる国民的俳優の勝新太郎がハワイ・ホノルル国際空港で大麻とコカインを所持していたとして逮捕されて衝撃を与えた。1995年には長渕剛が大麻所持で捕まり、捜査の過程で国生さゆりと不倫関係にあったことが取りざたされた。 この事件を取材した当時の新聞記事では、若者が海外でコカインを味わい薬物を常用するようになっていることや、一部のタレントが特権意識やファッション感覚から薬物を使用しているとされた。この現状は今も変わっていない。 芸能界と薬物を巡るターニングポイントはやはり2009年で、酒井法子の事件と押尾学の事件が相次いで発生した。押尾の場合、一緒に薬物をやっていたクラブホステスが亡くなるという最悪の事態を起こす。 同じ年、沢尻にも転機が訪れていた。当時の所属事務所が自発的に薬物検査を行い、違法薬物の陽性反応が出たことを理由に契約解除されたと報じられた。「押尾事件でMDMAの危険性が全国に知れ渡り、その後はMDMAの押収量が激減しました。ところが近年は『ピュア』(沢尻が所持していた、MDMAの良質な成分だけを結晶させた粉末状のもの)の登場もあって、再び増加している。社会全体が薬物に対するリスクを軽視し始めている風潮もあるでしょう」(捜査関係者) 歌手の千葉マリアの息子で、薬物依存症の回復を支援するリハビリ施設「館山ダルク」代表の十枝晃太郎さんが言う。「芸能界は社会の縮図であり、世間での薬物の蔓延の度合いが、芸能界に表れているように思います。それでも、芸能人にはたしかに薬物に手を出してしまうような気質の人も多い。田代まさしさんと接すると、“常に人を楽しませたい”というサービス精神を感じました。人に薬物をすすめられた時、断りにくかったり、相手の期待に応えたいという気持ちが、つい出てしまうのかもしれません」 そもそも芸能界と違法薬物の親和性が高いという指摘もある。薬物犯罪に詳しい作家の藤原良さんが話す。「時代はヒロポン(覚せい剤)が合法だった時代にさかのぼります。時々ビートたけしさんもテレビなどでヒロポン話をネタにして笑いをとったりしていますが、芸能界だけでなく落語家、歌舞伎役者も昔はヒロポンを使っていた。 その後、覚せい剤が違法になると、一気に流通量が減ります。そこで水面下で覚せい剤を運べたのが、1つは全国組織の暴力団のネットワークです。もう1つが、暴力団のサポートの下で全国各地を興行で回っていた芸能界だった。むしろ、ヤクザ特有の『シマ(縄張り)』がない分、芸能関係者の方が運びやすかったとも言えます。ミュージシャンやタレントだけでなく、その付き人やスタッフも、かつては“運び屋”をして糊口を凌いでいた人が少なくありませんでした」 芸能界と暴力団組織が非常に近い関係だった時代があったこともたしかだ。ヤクザ側からの太い“供給ルート”もあっただろう。反社会的勢力との交際が御法度である現在はどうだろうか。薬物の売買にかかわったことがあるという暴力団関係者はこう話す。「大御所と呼ばれる歌手や芸人、タレントだけでなく、事務所の関係者にも、かつてのヤクザとの関係が続いている人も少なくない。若い芸能人だって、そういう先輩を見て育っているから、ヤクザに抵抗感は少ない。 結局のところ、今日本で出回っているほぼすべての違法薬物は、海外マフィアから暴力団が仕入れたものです。それが現役組員から、元組員や半グレ、友人知人らを経由してバラ撒かれる。実は、組員から直接、常習者に売られるケースはほとんどないですが、それでも芸能人の中には、ASKAのように現役組員から直接入手するケースも少なくない。結局、かつての“腐れ縁”が今も続いているということなんでしょう」※女性セブン2019年12月19日号
2019.12.08 16:00
女性セブン
今井絵理子氏が推薦人に(時事通信フォト)
今井絵理子議員 沖縄半グレリーダー疑惑男性との写真流出
 桜を見る会に、反社会的勢力が大挙して押し寄せていたことが、国会で問題になっている。彼らは、政治家との親しい関係を、自分の“ビジネス”を信頼させる切り札として使う。それだけに、政治家、しかも政府の要職にある立場であれば、交際には慎重にならねばならない──。「きっかけは11月18日、東京・永田町の国会議員事務所に投函された1通の“怪文書”でした。そこには、今年の総理主催の『桜を見る会』で、参加男性数人がポーズを取っている写真や、彼らが海外のプールで入れ墨を見せている写真が載せられていました」(政治ジャーナリスト) 連日、国会で「桜を見る会」問題が紛糾を続けている。 安倍晋三首相を中心とした自民党議員らが地元支援者を大勢招待し、税金で“接待”した疑惑や、招待者リストが不可解なタイミングでシュレッダーにかけられて闇に葬られた問題など、次から次へと疑惑が噴出するなかで、突然、追及の火の手が上がったのが「反社会的勢力が参加していた」というスキャンダルだ。 その追及のもとになったのが、冒頭の怪文書だ。その写真におさまっていたのは、「半グレ」と呼ばれる不良集団の有名メンバーだという。「1人は、半グレ・グループのリーダー格のX氏です。詐欺や恐喝容疑で逮捕された経歴を持ち、大阪で有名になった後、沖縄の諸島部に移住し、現在は石垣島などを縄張りとしたグループとして知られています。X氏は、中央政界に顔がきく与那国島の有力者のルートで招待されたようです。沖縄では最近、半グレ・グループの暗躍が大きな問題になっているんです」(沖縄県警関係者) 今年3月、沖縄の有力紙「琉球新報」は次のように「半グレ問題」を報じている。《「半グレ」と呼ばれる不良集団が県内に少なくとも3団体いるとみて、沖縄県警が警戒を強めている。本島中南部や先島地方を拠点に活動し、県警が把握しているだけで総勢約80人いるとされる。(中略)闇金や特殊詐欺などで資金を獲得しているとみて、捜査を進めている。 捜査関係者によると、3団体の中には違法行為だけでなく、合法的な飲食店事業、観光業、建設業などにも進出しているという。》(2019年3月3日付) 捜査関係者が説明する。「県警が把握している3団体とは、那覇市の繁華街を中心とする最大のグループ、中部の浦添市を本拠地にするグループ、そして石垣島を縄張りとする『Xグループ』です」 半グレ勢力の拡大に危機感を持った県警は昨年4月、もともとは暴力団を取り締まることが目的だった刑事部「暴力団対策課」を改編して、半グレ対策も視野に入れた「組織犯罪対策課」を発足させた。 前出の新聞記事は、次のように続けている。《(半グレ集団は)県内の市町村議員や首長、国会議員ら政治関係者への接触も確認されている。》 その記事が指摘した通り、沖縄の半グレ・グループは首相主催の「桜を見る会」に招待されるほどまでに、国会議員に食い込んでいるのである。「桜を見る会だけではありません。那覇にあるグループのリーダーだと県警が把握している男性A氏が、沖縄出身で政府要職に就く国会議員と一緒に撮影した写真が出回っていて、“どのような関係なのか”と警察当局は重大な関心を寄せているのです」(地元政界関係者) 元「SPEED」のメンバーとして、全国区の知名度を誇る今井絵理子参議院議員(36才)は、今年9月、安倍首相によって内閣府政務官という政府要職に抜擢されたばかり。10月末に首里城(那覇市)が焼失すると、率先して再建に動くなど、その活動が注目されている。 そんな今井氏が笑顔でガッツポーズを取る1枚の写真が、物議を醸している。◆「地元の後輩」「私が信頼する男です」「A氏がSNSにアップする写真に、たびたび今井議員が登場すると話題になっています。また、沖縄選出の衆議院議員であり、安倍内閣で法務政務官を務める宮崎政久議員(54才)と写った写真も多数ある。A氏を中心に今井氏と宮崎氏がガッツポーズを取る写真は、2~3年前、宮崎氏の地元選挙区である浦添市で撮られたもののようです」(前出・県警関係者) A氏は、宮崎氏の公式SNS上にも登場し、宮崎氏はA氏のことを「地元の後輩」「私が信頼する男です」と紹介している。SNS上で交換されたメッセージを見ると、宮崎氏が今井氏のことをA氏に紹介したようだ。「A氏は金融業や飲食店経営、観光業などを手広く展開してきました。地元市議の後援会に入ったことをきっかけに、国会議員にもネットワークを広げているようです。4年前には、金融業のトラブルが発端で、知人男性に暴行を加えた上に、手足を縛って拘束したとして、那覇署に逮捕されました。A氏はその事件の弁護を、宮崎議員が所属する弁護士事務所に依頼。結果的に、不起訴になったそうです」(前出・県警関係者) 一般に、なぜそうした人物が政治家との密接な関係を求めるのか。 たとえば、2015年の「桜を見る会」では、特定商取引法違反容疑で2017年に家宅捜索を受けた「ジャパンライフ」元会長が安倍首相に招待されたことが、国会で追及されている。同社は投資家などの顧客に数百万円の磁気ネックレスなどを売りつけ、別の顧客にレンタルすることで収入が定期的に入るなどと謳った、いわゆる「オーナー商法」で資金を集めた。だが、2017年に倒産し、顧客が投資したお金はほとんど取り戻されていない。契約者は6000人を超え、1億円以上を託した高齢者もいた。 普通ならば誰でも“怪しい”と感じる商法だが、同社は《安倍晋三内閣総理大臣から会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました》という文章を宣伝チラシに記し、招待状や受付票などの写真を印刷。安倍首相との関係を利用して、投資家を信頼させていたようだ。「いわゆる闇営業問題では、雨上がり決死隊の宮迫博之さん(49才)が詐欺グループの忘年会に参加し、謝礼を受け取っていたことが問題視され、テレビ番組をすべて降板、所属事務所からも離れました。しかし、宮迫さんに比べても、まんまと怪しいビジネスの“箔付け”に利用された政治家の罪の方がはるかに重い」(前出・政治ジャーナリスト) A氏との関係について宮崎事務所は、「A氏が『半グレ・グループのリーダー』であるという事実は把握していない。宮崎自身が、沖縄県更生保護協会の理事長を務め、犯罪をした者らの社会復帰に尽力してきたので、A氏から『二度とこうした事件を起こさないと決意した』旨を聞き、その決意に従うのであればと、時期に応じて後援会の仕事を手伝ってもらうなどしている」、今井事務所は「国会議員はさまざまな集会や会合に招かれ多数の来場者と記念撮影を求められるので、写真があるとすればそうした際のものかもしれない。A氏と個人的な面識はない」 と説明する。 反社との交際でテレビタレントが追放される時代だ。政治家こそ、より一層、襟を正さなければならないのではないだろうか。※女性セブン2019年12月19日号
2019.12.05 07:00
女性セブン

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