自ら「結果本位の仕事人内閣」と名づけた組閣人事が終わると、首相は広島(6日)と長崎(9日)で原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に臨んだ。
広島でのあいさつの冒頭、「原爆死没者」を「原発」と読み違えたのを訂正したあと、こんなくだりが続いた。
〈真に「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要です。(中略)そのため、あの悲惨な体験の「記憶」を、世代や国境を越えて、人類が共有する「記憶」として継承していかなければなりません。昨年、オバマ大統領が現職の米国大統領として初めて……〉
この挨拶文は長崎でもほぼ同じ内容。一字一句違わぬ部分ばかりの、いわゆる“コピペ”だった。しかも、祈念式典の挨拶文は毎年新たに書き換えられるはずが、今年は半分近くのワードが昨年の流用だったのである。
官邸のスピーチライターも投げやりなら、そんな原稿を通した官邸幹部たちも、気にせずに読みあげた安倍首相も仕事に身が入っているとは思えない。原因は人事失敗の後遺症にあるという。自民党元役員が語る。
「改造人事では伊吹文明・元衆院議長らが入閣を固辞したと伝えられているが、そんなもんじゃない。総理が白羽の矢を立てた大臣候補に次々に断わられ、組閣本部ではA4判の紙に書かれた名前がどんどんバツで消され、1枚じゃ足りなかったという」
内閣改造で心機一転どころか、泥船の安倍政権に「乗り込みたくない」という党内の本音を思い知らされて、いわば“思考停止”に陥っているとの見方である。
※週刊ポスト2017年9月1日号