これとは別に小選挙区の候補者(全国で959人)は1人につき5回分の新聞広告(1回誌面2段、幅9.6センチ)を税金で好きな新聞に掲載できる。

 掲載料は最高額の読売(東京本社版)が1回約262万円(税抜き)。候補者1人が5回分すべて読売に広告を出せば1300万円を超える。東京ブロックの小選挙区には97人の候補者が出馬したから、新聞広告費は東京だけで10億円前後にのぼったと推計できる。それが全国の小選挙区で地方紙にも落ちる。

 選挙公営の仕組みが新聞に有利なのは、広告費は候補者を通さずに国(選管)から新聞社に直接支払われることだ。候補者にとっても一定得票数に届かないと自腹になるポスター代やビラ代と違い、全額公費負担が保障されている。候補者は安心して血税を大新聞に注げるというわけだ。

 テレビ局の選挙収入はもっぱら政党のテレビCMだ。放映料は「15秒のスポット広告」で300万円から500万円が相場とされ、こちらは選挙公営ではなく政党が支払う。前回総選挙が行なわれた2014年の各党の宣伝事業費は自民党が約20億円、民主党が約24億円で両党だけで44億円に達した。

 財源は主に政党助成金であり、国民の税金から出されるのは同じだ。さらに2013年の参院選からは「資金力のない小政党や無所属候補も金をかけずに有権者に政策を訴えることができる」という触れ込みでインターネットでの選挙運動が解禁され、政党のバナー広告が認められた。

 しかし、新聞・テレビ各社はこのネット選挙もビジネスチャンスとみて、自社ニュースサイトのトップ面や速報面に政党のバナー広告を呼び込む営業にも力を入れた。朝日新聞デジタルの場合、最高額の「ビルボードプラン」の料金はなんと1000万円である。

 選挙特需は告示から投開票までの12日間でざっと100億円は超え、テレビは選挙の開票特番で多くのCM収入を稼ぐことができる。まさに大メディアにとって「選挙ほどおいしい商売はない」のである。

※週刊ポスト2017年10月6日号

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