清水さんの元には、全国から講演依頼が舞い込む。現在、ほぼ2日に1回のペースで、がん患者や親族の前で壇上に立っている。
「正直、あの時を思い出すことはめちゃくちゃつらいです。でも先日、5年間がん闘病したご主人を、2日前に亡くされたという女性がいたんです。“こんなときに”と思うかもしれませんが、“こんなときだからこそ”来てくださった。張り詰めていたものが緩んで、やっと思い切り泣けたとおっしゃってくださいました。
今、やっていることが正しいのかなんてわからない。でも、ほんの少しでも意味があるのかな、だったら嬉しいなって。
今思うと、キャスター時代にも、“がん闘病はこれだけ大変だった”“シングルファーザーはてんてこ舞いです”と話せていたら、もっと心を救える人もいたんじゃないかって思うんです。ぼくの中に勝手に決めた意地みたいに凝り固まったキャスター像があったので、話すことができなかった。だからかな、今のぼくの話を聞こうとわざわざ来てくださるかたには、全力ですべてを話したいと思うんです」
この10月、長男は3才の誕生日を迎える。
「奈緒がぼくたちの横からいなくなってしまったのは、息子が生後3か月の時。その息子が、3才になります。時間は流れても、なんも変わらない。これまでの息子の誕生日は、やっぱり奈緒がいないことへの寂しさだったり、悲しさに包まれていました。でも今度はやっと、心から“おめでとう”って胸を張って祝ってあげられるような気がします。そうしないとアカンですよね。大切な人のために」
※女性セブン2017年10月19日号