味がしないからといって食べないと、さらに味覚障害が進行していくという負のスパイラルである。だからこそ、二宮院長は亜鉛を積極的に摂取して予防に努めるべきだと指摘する。

「亜鉛の摂取量は通常は1日10mgで、治療の場合は1日20mgを目安としています。食事で摂る場合、加工食品に含まれる食品添加物には亜鉛の吸収を阻害するものがあるので、なるべく自然食品から亜鉛を摂取することです。亜鉛を多く含む食品の代表は牡蠣。大きな牡蠣なら一つで1日分の亜鉛を摂取できます。

 他にも、ココア、するめ、牛肉、たたみいわしなどがあります。高齢でも治療すれば、認知症などに起因する一部のケースを除いて味覚障害は治ります。亜鉛の多い食材を積極的に食べることが大切です」(二宮院長)

 味覚障害に詳しい東北大学大学院歯学研究科の笹野高嗣教授(口腔診断学)は、自覚症状の乏しい味覚障害を、自分で簡単にチェックする方法を伝授する。

「一般的なサイズのコップを用意して、10分間、自然な状態で唾液を垂らし続けます。コップの底から1mm以下しか溜まらなければ、口渇の状態で、味覚障害を起こしている可能性があります」

“ちょっと味を濃く”の前に、まずは自分の味覚が正常かを確かめたい。

※週刊ポスト2017年10月27日号

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