実際、派遣型スキャン代行サービスという労働集約型ビジネスを展開している同社自身、外部のクラウドコンピューティングとクラウドソーシングを使いまくることによって、顧客のところに派遣する社員50人の間接業務を、たった1人のスタッフでバックアップしている。従来の日本企業の場合、50人の営業スタッフがいる会社で本社機構やサポートスタッフに100人くらいの人員を割いていることもあるが、それが「社長+1人」で事足りてしまうというのは、実に画期的な仕事のやり方なのである。
具体的には、電話対応はIP電話アプリの「050plus」、メール対応は「Gmail」、タスク管理・シフト調整は「Trello」、社員同士の連絡は「LINE」、決済は「Square」や「NP後払い」、請求書作成は「Misoca」、出張・経費精算は「Concur」、経理入力は「MerryBiz」……といった具合に、廉価に提供されているクラウドサービスを組み合わせて仕事をこなしている。
これらのサービスを駆使した同社のトータルコストは、月額わずか数十万円だという。その安さには私も仰天した。同様のシステムを大企業が導入すれば、おそらく間接部門のコストは億単位で即座に削減できるだろう。
このように見てくると、未だに間接部門で定型業務だけをこなす社員を大量に抱えている旧態依然の企業や、全国各地で同じような仕事をしている1700余りの地方自治体がいかに遅れているか、ということがよくわかるだろう。
政府の言う「働き方改革」はむしろ効率の悪い人材の温存を謳っているだけで、クラウドやAIの積極的な採用は見えてこない。仕事のやり方に対する役所と政治家の指図をまともに聞く経営者がいるとは思えないが、日本企業が競争力を磨く新しいツールがたくさん出てきた今こそ、仕事のやり方を抜本的に見直す好機である。
※週刊ポスト2017年11月3日号