翔太さんの手元には、まだ十数万円以上のチケットが残っていた。ショーの開催日も迫っていて、チケットを売り切らなければ、ギャラどころかショーの出演も見送られる。窮地に追い込まれていた翔太さんは、止む無くこのX氏と一晩を共にした。
ショーの開催日にはX氏らも駆けつけ、滞りなく終了したが、事前に説明されていたように「有名プロダクションのスカウトや関係者」が参加したような形跡はなく「多数の大手メディアによる」取材もまるでなかった。ステージ上には、翔太さんの他に数十人のモデルや関係者が上がり、最後は記念撮影をしたが、客席の人はまばら、というより客席の2割ほどしか客がいない。さすがにショーに参加した数人のモデルたちも同じように違和感を覚えたようで、翔太さんはこれまでの経緯を、恥を忍んで告白した。すると……。
「なんと全員が、X氏や別の男性から、チケットの購入と引き換えに肉体関係を要求されていました。チケットのノルマが僕より多かったり、レッスン代などの金銭を要求されていたモデルは、ゲイ向け性風俗店でバイトをしないかと強要されていた子もいたんです」
翔太さんらは、このイベント自体が「主催者たちの性欲、金銭欲」を満たすだけに仕組まれたファッションショーだと確信した。このショーはこれまでに複数回開催されているが、開催される度に出演者は違い、毎回翔太さんのような被害者が生み出されているのではないか、そう指摘する。
「少なからず女性出演者もいますが、彼女たちも同じように被害にあっている可能性は高い。出演者に金を払わせて儲けるというシステム。ファッションショーなんてデタラメです。一部、主催者を訴えようという動きもありますが”自業自得”と言われる可能性もあり、なかなか表立って行動に移せない」
夢をちらつかせ、金と体を搾取する卑劣な手法。被害者が被害者であることを気付かせないようにと、実に様々なやり方で、平穏に暮らす人々の生活を蝕もうと企む連中が存在する。被害に遭うのは、いたいけな少女、そして無垢な子供たちだけではないということだ。