これが、当時の資料をもとにした私の認識だ。でもそうなると、母は診断の時点でいろいろなことができなくなっていて、今ごろは寝たきりでもおかしくない。
確かに、診断直後から1年半続いた独居中には、気が変になったような物盗られ妄想が出るなど、家族としてショックな変化もあったが、3年前サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に引っ越し、落ち着いた生活を取り戻すと、できることがまだまだたくさんあるのだ。
たとえば献立を立てて料理することはできないが、包丁遣いが衰えていないことは料理のデイサービス体験で実証済み。掃除も小さな居室の規模ならひとりでできる。趣味の読書や観劇も、活字や劇場の雰囲気に触れ、瞬間瞬間を楽しむ意欲はなくしていない。
日々衰えていくことは覚悟しつつ、“まだできること”を埋もれさせず、掘り起こすことも大切だ。意欲満々の母のそばで、手探り伴走は続く。
※女性セブン2017年11月9日号