「ソラニンでキャラクターたちの全てだった音楽が、10年経つことで単なる趣味になっていたり、大事な人のことを忘れていたり──。自分の中でも、時が経つにつれて『ソラニン』に対してそういう気持ちの変化があったので、そうした抗えない時の流れを納得して書くことができました」
作品を読み返してみると、20代の頃の自分に対しての驚きと恥ずかしさがあったという。
「とにかく絵が下手ですね(笑い)。今回、ライブシーンを描いたのですがしっかり取材したこともあって、良い絵が描けた。当時は画力もないし、イメージで描いている部分もあって酷いです。これは恥ずかしい。
でも、台詞は20代の頃しか書けなかったようなものがあって昔のほうが優れているなって思うところがありました」
そう感じたのは、多くのヒット作を生み出してきたがゆえに「良い台詞」を意図的に生み出せるようになった感覚があったからだと話す。
「こうすれば話が成立する、みたいなのが段々と分かるようになって“上手く”なってしまったんです。ある意味、間違いのない台詞を選べるというか……。でも、台詞は技術じゃなくて感情が大事だったりもするので、その点に関しては20代だった当時しか書けなかったなあと思いますね。間違いだらけですけど、そこがいい」
今回の最新話は、多くの同世代読者が読むことになるだろう。そこでは「時代感」を感じてほしいという。