「どんな仕事でもできる職人になりたい」小林勇貴監督(右)
──これまでの映画は商業デビュー作の『全員死刑』も含めてすべて、実際に起きた事件をもとにした実録映画でした。現実に起きたことをベースにした映画を撮ることにこだわりがあるのでしょうか?
小林:決して実録モノが得意だと思っているわけではなく、そのときの興味がそこにあったので、たまたま実際の事件をもとにした作品が続いています。これから商業映画を撮っていくなかで、絶対に実録モノ路線でないとイヤだとは思っていません。でも、仕事をお願いしてくれる人が、持ち味のひとつとして認めてくれるのはすごく嬉しい。でも、こだわりはあまりありません。
──ひょっとしたら、高校生の恋愛映画を頼まれる日が来るかもしれないですね。
小林:きた仕事は断らないというのが、師匠の西村喜廣監督の教えです。「小林勇貴」という職人を通過したら、どんな題材でも面白いものになると、誰からも信じてもらえる状態になるのが夢です。監督というのは職人仕事だと思っているので、やることを限定する悪しき職人ではなく、どんな仕事でもできる職人になりたいと思っています。
●こばやし・ゆうき/1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。東京デザイン専門学校グラフィックデザイン科卒業。『Super Tandem』(2014年、40分)で第36回PFF入選、『NIGHT SAFARI』(2014年、60分)でカナザワ映画祭グランプリ。『孤高の遠吠』(2015年、126分)で第26回(2016)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門グランプリ。2017年は『逆徒』、商業デビュー作品となる『全員死刑』(2017年11月18日公開)、さらにもう一作品の公開が控えている。取材に基づいたリアリティある暴力描写と、飛躍も包み込むファンタジックな語り口への評価が高い。
◆取材・構成/横森綾