大人になったら、時間の使い方がうまくなる、なんて聞くけど、なんのなんの。頭を使った分だけボーッとリビングでクールダウンする時間もやはり多い。
では、足りない時間をどう捻出するのか、どう冷静に考えられるのか、ここが大人の腕の見せ所ではないだろうか? 若い頃の頑張った分と同じくらい遊んでやるぞと躍起になっていた気持ち…そんな力を、今はソーラーパネルのように蓄電し、いざという時の力に変える。唯一ホッコリする友人との時間も、後ろ髪をひかれながらも頑張って短くきりあげてみる。
以前、冷静な知人が「人との話はだいたい2時間で要件は終わっているものでしょ」って言ってたなぁと思い出し家路を急ぐ。そんな風に自分に課していた時間を少しずつ見直していくと、案外時間はできてくるものだ。
そして、絶え間なく流れる水というか、常に流れている小川みたいな感じで、一つの所で停滞しない事を心がけている。何か失敗してしまった時も、自分の中に負の感情が溜まってきた時も、“考える”又は“悩む”必要のない時は、それをいかに流すか…ダラダラと考え続けない“流す力”が必要だ。ここは年齢や経験を重ねてきて上手になってきたのかもしれない。もやもやしている暇があるなら、先へ進むことで時間が節約できるというものだ。
“水に流す”
“流れる水は濁らない”
水にまつわる言葉が好きだ。私の大切にしている格言でもある。私、一白水星であり水瓶座だから? …関係ないか。
以前、中村扇雀さんに教えてもらったことがある。年中公演で365日働き詰めの歌舞伎役者さんは、どうやって休んでいるのか聞いてみると、「毎日舞台が跳ねた瞬間から休みだと考えるようにしてる…」と。なるほど! と膝を打った。そういえば、私も宝塚のピーク時、そういった思考でくぐり抜けたものだった。
あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと、先々のことを考えず、今、この瞬間だけを意識して生きる。溜まった仕事も、人付き合いも、掃除も、やらなければならないことは山積みかもしれない。でも、あえて目の前の事だけに集中しコツコツと片付けていく。実は、大変にさせていたのは、先々まで考えてしまういらない己の想像力なのかもしれない。
先のことは、又その時考えればいいじゃない。と、私は今この女性セブンの原稿だけに集中し、コーヒーをいただいている。
撮影/渡辺達生
※女性セブン2017年11月23日号