3時間を超えたインタビューの最後に、西田は「これだけは分かってください」とこう力説した。
「分かってほしいのは僕の人格ですよ。経営者としての人格。僕が不正を見逃して、言っては悪いけども、あの時期(リーマンシ・ショック後)、数千億円の赤字が出ている時にですよ。そんな時に100億円だの、200億円なんてゴミですよ。本当ですよ」
私は会長時代の西田をインタビューした時のことを思い出していた。あれほど夢や未来について語っていた西田の口から溢れるように出てきたのは、佐々木らへの罵りと批判だった。大病の影響もあるのか、自己正当化を繰り返す西田の姿は、ただただ痛ましかった。
取材前、妻の(イラン出身の)ファルディンが言っていた言葉が印象的だ。
「東芝に対して優しくしてやってください。主人のことはともかく、東芝に優しくしてやってください。みなさん、朝から晩まで真面目に働く人ばかりです。本当に真面目でいい会社です」
彼女の大きな目からは涙がこぼれていた。
(敬称略)
●取材・文/児玉博(ジャーナリスト):新刊『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)は11月17日発売。
※週刊ポスト2017年11月24日号