「(佐々木の就任)2年目ぐらいでしょうね。取締役会でしか会わないけど、もうどんどん売上が減っているわけだから。僕がやっていた時は最高で、7.6兆円ぐらいまでいったんですよ。それが6兆円台になり、ひどいから取締役会で、ここまで売上が落ちたんだから、社長以下副社長、経営幹部は市場に打って出ろと言ったんだ。つまり新規の顧客を目指してみんなで営業活動を始めろということですよ。ところが、まったく外に出ず、馬耳東風です」
後継指名にしくじった自らの非に言及することは一度としてなかった。「選んだのはあなたですよ」との思いが強まるばかりだった。
◆「分かってほしいのは僕の人格」
西田は自らが買収を手がけたWH(米原子力大手ウェスチングハウス)による赤字についても、他人事のようだった。震災と原発事故がなければどうなっていたと思うか。それに対する西田の答えは意外とあっさりしていた。
「(3・11の)事故が起きなくても原子力事業は同じような問題が起きたんじゃないでしょうか。先延ばしされただけじゃないかな。すべては経営の問題だから。佐々木のようなことをしていたら早晩行き詰まったんじゃないのかな」
「3・11以前の段階で、世界の原子力事業の状況では、別にWH買収が間違っていたなんて僕は全然思ってないですよ。ただ問題は、3・11が起こったあと、状況は、ここで大きな変化があるわけだから、それに応じて、じゃあ世界の原子力事業はどうなっていくのかなと(予測しなければならない)。それに合わせて、例えば中の構造改革をやるとか、人員削減もするとかですね、手を打っていかなきゃいけない。これが経営なんですよ。それを何もしてこなかったっていうことでしょう、結局は」