ビジネス

『シン・ゴジラ』無人在来線爆弾車両が山手線引退の事情

映画『シン・ゴジラ』で無人在来線爆弾に使用された山手線E231系

 昨年公開の大ヒット映画『シン・ゴジラ』には、繰り返し鑑賞する熱狂的なファンも多く、先日の地上波テレビ初放送では、放送をみながらツイッターで実況をして楽しむ様子も見られた。ライターの小川裕夫氏が、ゴジラへの攻撃のひとつだった「無人在来線爆弾」に使用された車両が、もうすぐ山手線から引退する事情について追った。

 * * *
 2016(平成28)年夏に公開された東宝制作のゴジラシリーズ第29作『シン・ゴジラ』は、観客動員数や興行収入の記録を次々と塗り替える大ヒット作品となった。同作には、制作協力で多摩都市モノレール、江ノ島電鉄、東急電鉄、京浜急行電鉄、北総鉄道といった名だたる鉄道会社が名を連ねている。

『シン・ゴジラ』の制作スタッフには、鉄道ファンが多いとも言われている。総監督を務めた庵野秀明氏は雑誌インタビューやイベントなどでたびたび鉄道に言及し、ファンの間では模型鉄として知られる。

 また、同作で庵野氏をサポートした監督の樋口真嗣氏も生粋の鉄道ファン。それだけに、作中で描かれる鉄道シーンはマニアたちをも唸らせるほどの高いクオリティに仕上がっている。

 これまでのゴジラシリーズで、鉄道は破壊される標的でしかなかった。『シン・ゴジラ』では一転、”無人新幹線爆弾”と”無人在来線爆弾”という攻撃兵器として活用されている。”無人新幹線爆弾”として使用された車両は、東海道新幹線のN700系。そして、”無人在来線爆弾”にはE231系・E233系が充てられた。

 E231系とは、山手線や中央・総武線、東海道本線などで走っている車両だ。『シン・ゴジラ』の作中では、現実に走っている鉄道車両が兵器になっている。

 映画で大活躍したE231系だが、実は近いうちに山手線から姿を消すことが決まっている。すでに山手線には新型車両E235系が投入されており、随時、新車両に切り替えられるからだ。JR東日本広報部の担当者は、こう話す。

「状況により変更となる場合はありますが、山手線では2017年度中にE235系を15編成投入し、2020年春ごろまでに全編成を置き換える計画になっています」

 2015(平成27)年にお目見えした山手線の新型車両E235系は、斬新な顔のデザインが話題を呼んだ。他方、試験運転時にトラブルが頻発したことでも記憶に残っている。

 当初、E235系は編成数が多くなかったため、なかなか出くわすことがなかった。登場から2年が経過し、少しずつE235系は増えてきた。いまや、山手線でも当たり前のように見かけるようになっている。すでに、珍しい存在ではない。

 一般的に新車両は省エネ性能が増しているほか、振動や騒音が低減しているので乗り心地がよくなる。そのほか、行先表示などがLED化されているので視認性も向上し、利用者にとって便利で快適な、使いやすい車両といえる。

 E235系が増えれば、それだけ利用者にとって使い勝手はよくなる。ありがたい話ではあるが、E231系も決して古い車両ではない。なにより山手線の全車両がE231系に置き換えられてから、まだ12年しか経っていない。引退するのは、早すぎる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
歴史的快投を続けるカブスの今永昇太(写真/共同通信社)
【MLBで三振の山】カブス今永昇太、快進撃の秘密 内川聖一氏は「ストレートの回転数が多く、空振りを誘う」と分析
週刊ポスト
期待される2人の先行きが視界不良(左から大の里、二所ノ関親方)
【角界ホープ2力士に暗雲】尊富士は横綱・照ノ富士と宮城野親方の板挟み、大の里は師匠・二所ノ関親方の管理能力に不安要素
週刊ポスト
真美子夫人は「エリー・タハリ」のスーツを着用
大谷翔平、チャリティーイベントでのファッションが物議 オーバーサイズのスーツ着用で評価は散々、“ダサい”イメージ定着の危機
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者(51)。ストーカー規制法違反容疑の前科もあるという
《新宿タワマン刺殺事件》「助けて!」18階まで届いた女性の叫び声「カネ返せ、カネの問題だろ」無慈悲に刺し続けたストーカー男は愛車1500万円以上を売却していた
NEWSポストセブン
氷川きよしが独立
《真相スクープ》氷川きよしが事務所退所&活動再開 “独立金”3億円を払ってでも再出発したかった強い思い
女性セブン
殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
初となる「頂上鼎談」がついに実現!(右から江夏豊、田淵幸一、掛布雅之)
【江夏豊×田淵幸一×掛布雅之の初鼎談】ライバルたちが見た長嶋茂雄秘話「俺のミットを“カンニング”するんだよ」「バッターボックスから出てるんだよ」
週刊ポスト
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン