2度の結婚で3人の子供がいるが、プライベートを公開しないのがモレノのポリシー。トレードマークの黒いサングラスに、ブラック・メタリックのメルセデスで球場に現れる。必ずクラブハウスに顔を出し、英語とスペイン語でナインに声を掛ける。筆者もキャンプやシーズン中に、松井秀喜氏と談笑する姿を見掛けた。この辺りのコミュニケーション術は面談の段階から、大谷のハートをガッチリ掴んだはずだ。
オーナー室に閉じこもることなく、球場内も歩き回る。ビールの料金を下げたり、気軽にファンのサインに応じるなど、強面のルックスとは真逆の親しみやすさが売り物だ。2005年には「ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム」と球団名を変更してアナハイム市と裁判沙汰になったこともあったが、市場拡大を狙う戦略に出た結果であり、商魂たくましい。
契約金231万5000ドル(約2億6200万円)と、メジャー最低年俸の年俸54万5000ドル(約6160万円)のバーゲンプライスで大谷をゲットしたモレノ。一方、経済誌「フォーブス」によれば、今季エンゼルスに付けられた市場の値札は、17億5000万ドル(約1485億円)と、買収時の7.5倍に跳ね上がっている。入団会見で、モレノは「シーズンチケットを買って欲しい」と日本へのセールストークも忘れなかった。超格安で獲得した大谷が活躍すれば活躍するほど、日本での知名度も上がり、エンゼルスの値札は今後も上がり続けるだろう。買い物上手のアート・モレノ、恐るべしである。