「『余命半年。2年後の生存率は0%』と宣告されたときにはパニック状態になり、『そんな話は信じません』と思わず口にしていました。
親でさえあれだけショックだったのに、これを本人に伝えたらどうなるのか……きっと症状が悪化するだろうと思い、余命のことは伝えず、いつも通りに接しました。2年を過ぎた頃からやっと、前向きに暮らせるようになりました」
息子・貴之さん(46)は今も健在だ。当時の状況をこう振り返る。
「抗がん剤療法の副作用に苦しみ、手術の後遺症で腸閉塞にも悩まされました。いつまでこんな状態が続くのか、精神的に不安定な状態でしたが、おかげで色んな治療法に巡り合うことができ、今まで生きることができている。
余命については、発覚の5年後に母から『もう大丈夫そうだから言うけど、実はあの時余命を2年と言われていたの』と教えられました。明るく話す母の表情を見て自分の病状を受け入れられましたが、発覚当時には余命を知らなくて良かったと思っています」
彼らは、余命の問題について議論を深めるため、実名での取材に応じた。重要なのは、「あと何日生きられるか」より「残りの人生をどう生きるのか」なのかもしれない。
※週刊ポスト2017年12月22日号