繰り上げ受給には“損益分岐点”がある。たとえば、60歳から繰り上げ受給した場合、「76歳8か月」より長生きすると、65歳受給開始の場合と比べてもらえる総額が少なくなってしまう。男性の平均寿命は83歳だから、基本的に“繰り上げは損”だ。

 ただし、健康寿命である71歳までの受給額を重視するなら、“繰り上げが得”という結論に変わってくる。

 たとえば元気なうちに家族と旅行に行きたい場合。あおぞら銀行の「シニアのリアル調査2016」によれば、海外旅行の平均費用は「子供や孫との旅」で49万6300円、「夫婦の旅」では41万300円だ。

 定年後の家計には大きな出費だが、60代のうちに思う存分楽しみたければ、「繰り上げ」が味方になり得る。60代で最も多く年金を受け取れるのは「夫婦で60歳」に繰り上げだ。60代での受給総額は約1858万円。65歳受給開始のケースと比べて約500万円多くなる。

※週刊ポスト2018年1月1・5日号

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