昨年末、楽天が通信キャリア事業への参入計画を明らかにして大きな話題になった。NTTドコモ(以下ドコモ)、KDDI(以下au)、ソフトバンク(以下SB)に次ぐ、「第4のキャリア」への昇格宣言だ。この3月末までには正式に申請、認可され、来年には実際に楽天のサービスが始まりそうだが、そもそもなぜ、このタイミングでのキャリア参入だったのか。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がスマホ業界の現状をレポートする。
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楽天が、いわゆる格安スマホ市場に参入したのは2014年秋のこと。この市場は、前年の2013年に、iPhoneがSIMフリー端末を投入したことで話題になり、同年秋、対抗するようにグーグルも同社の純正端末「Nexus5」でSIMフリー端末をぶつけてきた。
実は筆者も同時期、このグーグルの端末を4万円で購入している。通信キャリアとの契約だとスマホの月額料金が高かったため、二の足を踏んでいたのだが、手頃な価格で端末が購入できるうえ、月額料金も格安SIMカードサービスを提供するところが出てきたからだ。
それがインターネットイニシアティブ(以下IIJ)。同社では、従来からあった法人向けに加え、2012年からは個人向けにもIIJmioという名称でSIMカードのサービスをスタートしていた。
当時、データ通信量でいえば、500MBで月額約1000円と、低価格ながら通信量は心もとない感じだったが、IIJが先駆ける形で月額料金は同額のまま、翌2014年4月には1か月の通信量が1GBに、2015年4月には同3GBまで拡大されて今日に至っている。この間、2014年春にはイオンも格安スマホ、格安SIMカード市場に参入し、以後、楽天も含めてあまたの企業がこの市場に参入していった。
では、なぜそんなに参入障壁が低いのか。そこに触れていくと、似たような名称に触れざるを得ないので先に説明しておこう。通信キャリアは別名、MNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)と称され、IIJや楽天などはMVNO(モバイル・バーチャル・ネットワーク・オペレーター)と呼ばれる。
MVNOは、MNOの通信回線を借り受ける形でサービスを提供するため、投資額がそれほどかからない。いわば人のふんどしで勝負できるのである。ゆえに、たとえばIIJと契約すると課金やサービスは同社との契約となるものの、スマホの端末に挿すSIMカードには「docomo」と刻印され、契約数もドコモの増加分としてカウントされる。
こうして雨後の筍のように増えていったMVNOはうなぎ上りで契約者を獲得できたのだが、昨年、その勢いにブレーキがかかった。